古今の秘密の教え 錬金術の理論と実践1

ページ名:古今の秘密の教え 錬金術の理論と実践1

錬金術の理論と実践

その1


 錬金術、このケムの地の秘密の術は、占星術と並んで既知の世界で知られる最古の二つの学である。両者ともその始まりは、歴史が記される以前の忘却の時代にまで遡れる。現在まで残る初期の文献によれば、錬金術と占星術はその助けにより人が失われた地位を回復させるため、神が人類へと明かしたものとされた。ユダヤ教ラビらによって保持されてきた古い伝承によると、エデンの門を守護する天使がアダムにカバラの神秘と錬金術を教え、人類がこれらの術の中に隠されている秘密の知識に熟達したならば、禁断の果実を食べた事による神の呪いは取り除かれ、人は再び主の園へと入るだろうと約束した。だが人が没落した時に「皮の衣」(肉体)を身に纏うようになったように、これらの聖なる学もまた人類により低位の諸世界へともたらされ、(物質という)濃密な乗り物の中に入り、そのため霊的で超越的な性質はもはや自らでは発現できなくなった。そのため、これらの諸学は滅びたか失われたと見做された。


 錬金術の物質的側面は化学である。そのため化学者はトーラー*1の半分が、イシス女神のヴェール(タロットを参照)の背後に永遠に隠されているのに気付かず、彼らが物質的要素のみを学ぶ限りにおいては、良くても密儀の半分のみを見つけられるのである。占星術は天文学へと純化され、これらの信奉家らは古代の予言者や賢者らの夢を笑い物にし、これらの象徴を意味の無い迷信の産物と嘲っている。にも関わらず、現代世界のインテリらは決して可視と不可視の世界を分かつヴェールを通過する事は出来ない。その例外は、定められた道――密儀によってである。


 生とは何か? 知性とは何か? 力とは何か? それらは古代人らが学習の神殿で捧げた解答の問題である。これらの質問に彼らが答えられなかったと誰が言おう? 答えが与えられたとして誰が認識しよう? 錬金術と占星術の象徴の下に隠された知恵は難解すぎるので、人類の精神でその諸原理を考えられる可能性はあるのだろうか?


 カルデア人、フェニキア人、バビロニア人らは、初期のオリエントの諸民族として錬金術の諸原理と親しんでいた。これはギリシアとローマでも実践されており、エジプト人らはこの学の熟練者だった。ケムはエジプトの地の古代の名前であり、錬金術アルケミーと化学ケミストリーの二つの言葉は、エジプトのこの学の知識の永遠の証明である。これらの初期の人々の残した記録の断片によれば、錬金術は彼らには思弁の術では無かった。彼らは金属の増殖の可能性を絶対的に信じていた。これらの繰り返しの面において、学者と物質主義者らは錬金術理論のこれらの概念にはより向いているであろう。進化論者は原始人の増大する知性を通じての術と学の広がりを追跡する。一方で、超越主義的な観点からは、これらを神からの直接的な啓示と考えるのを好む。


 錬金術の起源に関しての謎には、多くの興味深い解答がある。ある説では、錬金術は神秘的なエジプトの半神、三重に偉大な(トリスメギストス)ヘルメースにより人類に明かされたというものである。不朽のエメラルドの板を持ち、時の霧より迫ってくるこの深遠な人物は、エジプト人らからは全ての術と学の始祖と見做されていた。彼の名誉のために、全てのこの学の知識は、ヘルメースの術の一般名称の下で集められていた。ヘルメースの遺体がエブロン(あるいはヘブロン)の谷に埋葬された時に、神的なエメラルド板も共に埋められた。何世紀も経った後にエメラルド板は再発見された――伝承の一つではアラビア人の秘儀参入者の一人によってであり、別の伝承ではマケドニアのアレクサンドロス大王によってである。そこに刻まれた三重に偉大なヘルメースの――全ては13行にすぎない――このエメラルド板の文字の力により、アレクサンドロス大王は既知世界の全てを征服した。だが、自らの征服をしなかったので、大王は究極的には失敗した。その栄光と力については、喋る樹らの予言は成就し、アレクサンドロス大王はその勝利の頂点で急死する(この結果に際して、アレクサンドロス大王は高次の教団の秘儀参入者であったが、力への誘惑に対抗できなかったために没落したという絶え間ない噂がある)。


 E.Y.ケネアリーは、ペルソン ゴベリヌス博士*2の「コスモドロミウム」の引用において、アレクサンドロス大王がインド遠征中に喋る樹と出会う話を記している。「そして今、アレクサンドロス大王は同様に危険な別の半面を行軍していた。山脈の頂きを進み、別の暗い谷を通り抜けて、その間に彼の軍隊は蛇や野獣に襲われた。そして300日が過ぎた時、彼は最も喜ばしい山へとたどり着いた。その山の一面は鎖か黄金のロープが吊るされていた。この山には2050段の純粋なサファイアによる階段があり、それにより山頂へと登れた。そしてアレクサンドロス大王はその近くで野営を取った。そして朝になると、アレクサンドロス大王は12人の君主らとともに、先に述べた階段により山頂へと向かい、そこに驚くほど美しい宮殿があるのを見つけた。12の門と、純粋な金による幾つもの窓があり、太陽の宮殿と呼ばれていた。その中には全てが黄金の神殿があり、これらの門の前にはカーバンクル石や真珠の幾つもの実を作るつるの木があった。アレクサンドロス大王と君主らは宮殿の中に入り、そこに黄金のベッドに眠る男を見つけた。彼はとても品位と美のある外見をしていた。彼の髪と髭は雪の様に白かった。アレクサンドロス大王と君主らは、この賢者の前に跪くと、男は語った。『アレクサンドロスよ、汝は世俗の者らがかつて見も聴きもしなかったものを今見ているのだ」アレクサンドロス大王は答えた。「最も幸福な賢者よ。どのように余を知ったのでしょうか?』彼は答えた。『大洪水が地を覆う前に、私は汝の働きを知っていた』さらに加えて言った。『ところで汝は、全ての未来を伝える、太陽と月の最も聖なる樹らを見たいか?』アレクサンドロス大王は答えた。『はい、我が主よ。余は喜んでそれらを見たいと長く思っていました』


「すると賢者は言った。『指輪と装飾品を取りはずし、靴を脱いで、私について来なさい』そしてアレクサンドロス大王はそうすると、君主らから3人を選んで、残りの者らは彼の帰還を待つようにさせた。彼は賢者に従っていき、太陽と月の樹らへと到達した。太陽の樹は赤金色の葉があり、月の樹は銀の葉があった。それらはとても大きく、アレクサンドロス大王は賢者の示唆により、樹らにマケドニアへ勝利の凱旋が出来るかを尋ねた。樹らは否と答えて、だが汝はあと別の1年と8ヶ月を生きられ、その後に毒杯により汝は死ぬだろうと述べた。そして大王が誰が余に毒杯を与えるのかと尋ねると、樹は答えなかった。そして月の樹が大王に言った。大王の母は、最も恥ずべき不幸な死をした後、長く埋められずに放置される。そして幸福は彼の姉妹らのために保持されると。」(「エノクの書、神の第二の使者」を参照せよ)


 ほぼ確実に、いわゆる喋る樹というのは、実際には単に文字の表が書かれた樹の皮であり、これにより神託は喚起されたのだろう。この頃に樹に書かれた諸書は「喋る樹」と呼ばれていた。錬金術の起源を探る難しさは、アトランティスの失われた大陸への無知から直接原因がある。この大奥義はアトランティスの祭司団らの秘密の中でも最高のものだった。アトラスの国が沈んだ時、火の密儀の高祭司らは、この形式をエジプトへともたらし、そこで何世紀もの間、賢者と哲学者らに保持されてきた。これは徐々にヨーロッパへと移動し、その秘密はなおも触れられないまま保持されてきた。


ヘルメースの聖なる樹の葉

1577年の文書の再描画


 「錬金術の鍵」の書の中で、サミュエル ノートンは錬金術の物質が最初に試験管の中に置かれた時から、植物、鉱物、人のための薬として準備されるまでの間の、プロセスあるいは状態を14の部分に分割している。


1. 溶解。気体や固体状態から液体状態へと通過させる働き。
2. 濾過。液体とその中にある溶解し切れない粒子との機械的な分離。
3. 蒸発。熱に助けにより、液体や固体から気体へと変換する。
4. 蒸留。溶解でも残った物質と揮発性の液体を分離させる作業。
5. 分離。物質らを離したり分解する作業。
6. 精溜。繰り返しの蒸留により、物質を精練、浄化するプロセス。
7. 煆焼。熱の働きにより、粉や金属灰へと変換する。物質から揮発性の形質への圧出。
8. 混合。違った物質らを混ぜて、新しい混合物、形質とする。
9. 精製(腐敗作用を通じて)。自発的な腐敗による分解や、人工的な方法による腐敗。
10. 抑制。保留や抑制のプロセス。
11. 発酵。有機体物質を発酵作用により新しい構成に転換する。
12. 凝固。液体状態を止めて固体化する活動あるいはプロセス。不動となる状態。
13. 増殖。数を増殖、増やしていく活動あるいはプロセス。増殖された状態。
14. 投入。卑金属を金へと転換するプロセス。


 これらのヘルメースとエメラルド板の伝承を否定する者らは、預言者エノクが記す200体の天使らが山脈へと降りてきて、錬金術の最初の教授者となったと見る。その起源が何にせよ、現代世界まで錬金術を保持してきたのは、エジプトの神官らであった。エジプトはその土の色から「黒い帝国」と呼ばれ、旧約聖書では「闇の地」として引用されている。この可能性の高い起源の理由から、錬金術は長い間、「黒の術」として知られていたが、それは悪という意味ではなく、その秘密のプロセスを常に覆い隠す闇の意味においてである。


 中世においては、錬金術は哲学や科学だけではなく、宗教でもあった。この時代の宗教的限界に反逆した者らは、それらの哲学の教えを金の生成の寓喩の中に隠した。この方法により、彼らは個人的書庫にそれらを保存でき、世間から迫害されるよりも、笑い物にされる程度に済ませられた。錬金術は三重の術であり、その密儀は三角形によって良く象徴される。その象徴は 3 x 3――3つの世界あるいは圏の中での3つの要素あるいはプロセスである。この3x3は、フリーメイソンリーの第33位階の密儀の一部であるが、それは33は3x3であり、イコール9は秘教的な人の数であり、神的な樹の根から流出した数であり、神の口から御言葉として溢れる4つの大川により養われる世界の数である。いわゆる錬金術の象徴の下には、重要な概念が隠されている。この笑われ、軽蔑される術が、永遠の生の門の三重の鍵をなおも無傷で保持させるためである。そのため、錬金術は三界――神の世界、人間の世界、エレメンタルの世界――の密儀であると悟る事で、賢者と哲学者らが彼らの知恵をなぜ難解な寓喩の中に隠したかが容易に理解できる。


 錬金術は増殖の学であり、生長の自然現象を基礎としている。「無からは何も来ない」は、太古からの金言である。錬金術は無から何かを作るプロセスではない。これは既に存在するものを増加、強化するプロセスである。もし哲学者が行ける人間は石から作る事も出来ると述べたら、啓明されていない者はおそらく「不可能だ!」と叫ぶだろう。それにより、彼らは己の無知を明らかにする。なぜなら、賢者には、あらゆる石の中に人となる種子があるのを知るからである。哲学者は人から宇宙は作れると宣言するかもしれないが、愚者は人はそこから宇宙が育つ種子とは悟らず、これを不可能と見做すだろう。


 神は万物の「内」と「外」にある。至高の者は自らを内側から外側への生長、表現と発現にもがく事を通じて発現させる。錬金術師により金を生長させ増殖する事は、小さな芥子種が種の大きさの数千倍の広さの茂みを作る事よりも奇跡的な事では無い。芥子種が完全に違った形質(大地)へ植えられたら、自らの大きさと重さの数百数千倍のものを生み出すならば、金の種がその大地(卑金属)へ植えられて、錬金術の秘密のプロセスにより育まれたら、この術により数百数千倍に増殖してはならないといえるのか?


 錬金術は神が万物の中にあるのを教える。彼は普遍的な霊であり、無限の形を通じて顕れる。そのため、神は闇の大地(物質宇宙)へ植えられた霊的な種である。この術により、この種を生長させ拡張させ、形質の全体は染められ、それにより種の様になる――純粋な金となるのは可能である。人の霊的な性質において、これは再生と名付けられている。エレメンツの物理体ではこれは変容と呼ばれる。霊的、物質宇宙でもそうであるように、知的世界でもそうである。知恵は愚者に授ける事は出来ない。なぜなら、知恵の種子は彼の中には無いからだ。だが、知恵は無知な者には授けられよう。彼は今は無知かもしれないが、知恵の種子は彼の中に存在し、術と文化により開発出来るからである。それゆえ哲学者とは無知な者の内側で「投入」が始まった者にすぎない。


 この術(学習のプロセス)を通じて、卑金属(無知のメンタル体)の形質全体は純粋な金(知恵)へと変容する。なぜなら、これは理解により染められるからである。それゆえ、神への信仰と接近により、人の意識は基底の動物的欲望(惑星の諸金属の物質により表わされる)から、純粋、黄金、神の意識と変容し、啓明され贖罪され、発現した内なる神は小さな火花から巨大で栄光ある存在へと増大していくだろう。では、精神の無知の卑金属が、適切な努力と訓練により超越した天才と知恵へと変容できるならば、この二つの世界あるいは圏で用いたプロセスが第三の世界では同様に真実ではないと言えるか? この宇宙の霊的、精神的な要素がこれらの表現へと増殖できるならば、類推の法則により、この宇宙の物質の要素もまた、必要なプロセスがわかるならば増殖できるはずである。


 上にあるものは下にあるあるものの如し。錬金術が偉大な霊的な事実なら、これはまた偉大な物理的な事実である。これが宇宙の中で起こせるならば、これは人の中でも起こせる。そして人の中でも起こせるならば、これは植物と鉱物の中でも起こせる。宇宙で一つのものが生長するなら、宇宙の全てのものは生長する。一つのものが増殖できるならば、全てのものは増殖できる。「なぜなら、上位者や下位者と同意し、下位者は上位者と同意するからである。」だが、魂の贖罪の道が密儀によって隠されているように、金属の贖罪の秘密もまた隠されている。それにより、冒涜者の手にこの秘密が渡る事が無く、誤ったものとならないためである。


 誰にせよ金属を生長させようとするならば、まず最初に金属の秘密を学ばなくてはならない。彼はまず全ての金属――全ての石、植物、動物、宇宙に似て――は種から生長し、それらの田ねは既に形質(処女なる世界の子宮)の体の中にあると悟らねばならない。人の種子が、彼が生まれる(あるいは生長する)前に宇宙の中にあったように、植物の種子が全ての時にあるものの、植物はその一部のみを生きるように、霊的な金と物質の金の種子は万物の中に常に存在する。金属があらゆる時代に生長するが、それは太陽がこれらに生命を与えるからである。これらは小さな灌木のように微かに生長していく。なぜなら、万物は様々な方法により生長するからである。生長の方法のみが種と等級に応じて違っているのである。


 大いなる金言の一つは、「万物の中には、万物の種がある。」もっとも、自然のシンプルなプロセスにより、何世紀もの間、それらは潜在性のままにあったり、その生長は極めて遅いだろう。そのため、あらゆる砂粒には、貴金属や宝石の種を含むのみならず、太陽、月、星々の種も含む。人の自然の中には、宇宙全体のミニチュアが反映しているように、それぞれの砂粒にも、それぞれの水滴にも、それぞれの宇宙の塵の分子にも、宇宙の全ての部分と要素が小さな趣旨の形態で隠されており、それらはあまりに小さいので、最も優れた顕微鏡でも観察は出来ない。イオンや電子よりも一兆倍小さい、これらの種子――認識されず理解されずに――生長し拡張する時を待っている(ライプニッツのモナドを考えてみよ)。


 生長を達成するには二つの方法がある。一つ目の方法は、自然によるもので、そのため錬金術師は永遠に到達不可能である。二つ目は術によるもので、この術により比較的短期間に、自然がほとんど無限に近い期間に必要な複製を生み出す。この「大いなる作業」を達成しようと望む真の哲学者は、自然の諸法に従ったパターンで自らも行い、錬金術とは自然からの複製の技法にすぎないが、特定の秘密の形式の助けにより、強固にした存在により極めて短期間で行うものだと認識する。自然が奇跡を達成するためには、広範化と集約化のいずれかを通じて働かなくてはならない。自然の広範化のプロセスは、黒色炭素のかすをダイヤモンドへと変容されるなどに用いられ、自然の硬化のために何百万年も必要とする。集約化のプロセスは(A.ディー博士が言うように)常に自然の忠実な従者である術であり、自然のあらゆるステップを補足し、全ての自然の方法により、自然と共同する。「ゆえに、この哲学の作業においては、自然と術はお互いに強く愛し抱き合わねばならない。術は自然が拒絶するものを必要とせず、自然は術により完成するものを拒絶しないようにである。自然が同意するには、あらゆる術士に自然に服従するのを要求し、それによりこの作業で自然は助けとなり、障害とならないのである。」(A.ディー博士の「化学大全」より)


 この術の方法により、石の魂の中にある種子が激しく芽生えるようにされ、それにより僅かな期間で種子そのものからダイヤモンドが育つ。もしもダイヤモンドの種子が大理石、みかげ石、砂の中に無かったなら、ダイヤモンドはこれらから育つことは出来ないだろう。だがこれらの物の中に種子があるゆえ、ダイヤモンドは宇宙のその他のあらゆる形質からも生長されよう。だが一部の形質では、この奇跡はより容易に行える。なぜなら、これらの根源は既に肥沃であり、よって術の活性化のプロセスにより準備がされているからである。これは、ある者らに知恵を教えるのは他の者らより容易であるのと似ている。なぜなら、ある者らは作業のための基礎が既に確立しているが、他の者らの思考能力は完全に眠っているからである。そのため錬金術は可能な限り早めた、完全な花へと生長させる術と見做されよう。自然は望んだ目的を達成したり、一つの要素が他の要素に対しての破壊性から、達成出来なかったりする。だが、この真の術の助けにより、自然は常に目的を達成する。なぜならこの術は、時間の浪費や要素の反応の暴力にも属していないからである。


 リバプール大学の化学教授ジェームズ キャンプベル ブラウンは「化学の歴史」の中で、錬金術師らが到達しようと望んだことを以下の段落において要約した。


「そのため、これらが錬金術師らが自然が地下で行っていたプロセスを可能な限り実験室で行おうとした事の、一般的な目的である。7つの主要な問題が彼らの注意に占めていた。

1. エリクサー、普遍的医薬、哲学者の石と呼ばれる構成物の準備。これらは卑金属を金や銀へと変容したり、他にも多くの奇跡的な作用をする能力を持っている。

2. ホムンクルス、人造人間の創造。これには多くの驚異的で信じがたい物語がある。

3. アルカエスト、普遍的融化剤の準備。これらに浸されたら、すべての物質を融かす。

4. 新生、つまり植物をその灰から復元する。これに成功する事で、彼らは死者の復活も可能となると望んだ(ブラウン教授はこのための多くの事柄を記している)。

5. 世界霊スピリトゥス ムンディの準備。これは神秘的な物質で、多くの力を持ち、その主要なものは金を融かす能力である。

6. 全ての物質の精髄、活動原理を摘出する。

7. 流体金、至高の薬の準備。金はそれ自体が完全なものなので、人間の体も完成に導くと信じられていた。」


錬金術の象徴主義


 錬金術において、水銀、硫黄、塩の三つの象徴的な形質がある。それらに加えて、アゾットと呼ばれる第四の神秘的な生命原理もある。最初の三つについて、フォン ウェリング氏はこう記している。「哲学者らから塩、硫黄、水銀と呼ばれている三つの基本的な化学形質がある。だがそれらを地から取られたり薬屋から得たりする粗雑な物質の塩、硫黄、水銀と混同してはならない。塩、硫黄、水銀のそれぞれは、三重の性質がある。なぜなら、賢者の奥義によれば、これらの形質のそれぞれは、現実にはまたその他の二つの形質も含まれているからである。そのため、塩の体は、三重、すなわち塩、硫黄、水銀がある。だが塩の体の中では、この三つの中の一つ(塩)が優勢となっている。水銀も同様に、塩、硫黄、水銀からなるが、最後の物が優勢である。硫黄も同様に、実際には塩、硫黄、水銀であるが、硫黄が優勢である。これらの9つの分割――3 x 3に、アゾット(神秘的な普遍的な生命力)を足せば、イコール10、ピュタゴラスの聖なる10組となる。アゾットの性質については、多くの議論がある。ある者らは、これを不可視の永遠の火と見ている。他の者らは電気として考える。その他の者らは磁気である。超越主義者は、これをアストラル光と見做している。


 宇宙は星々の圏により囲まれている。それらを超えた場所には、シャマイム(天国)の圏があり、それは神の火的な水、神の御言葉の最初の流れ、永遠の存在から流れる燃える川である。シャマイム、火的な両性具有の水は分割される。火は太陽の火となり、水は月の水となる。シャマイムは普遍的な水銀――時にはアゾットと呼ばれる――生の計り知れない霊である。この霊的な火的な水――シャマイム――はエデン(ヘブライ語で蒸気)から来て、自らを四つの主要な川(エレメンツ)へと注がせる。これは生ける水の川――アゾット(火的な水銀のエッセンス)であり、神と子羊の御座から流れる。このエデン(蒸気のエッセンスあるいは霧)は霊的な地(理解不能で触れる事も出来ない)あるいは塵アファーであり、これから神はアダム ミン ハーダマー、人の霊体を作った。この体は時には明らかにされる。」


 フォン ウェリングの書の別の箇所でも述べているのは、ルシファーがシャマイム、神的な火を悪用して宇宙的な錬金術を試みようとするまで、物質宇宙は存在しなかったとする。ルシファーが歪めたシャマイムを再確立させるため、ルシファーの制御しようとする試みの失敗により闇の雲の中に固定されたシャマイムを解放する手段として、この宇宙は形成された。これらの文は、初期の哲学者らが聖書を化学と錬金術の形式の書として認識していたのを明らかに強調している。この観点を常に心に留めておくのは不可欠である。錬金術師らのとりとめもない寓意を文字通りに解釈した探究者は災いである。そのような者は決して真理の内なる聖所へ入る事は出来ないだろう。イライアス アシュモールは「英国の化学の劇場」の中で、錬金術師らにより彼らの真の教義を隠すために用いられた方法について記している。「これら化学者らの研究は、寓話の中にそれらの秘密は包まれ、それらの空想はヴェールと影の中に送られ、彼らの範囲はあらゆる方法により拡張され、やがては彼らは普遍的な中心、万物の一点へと到達する。」


 寓意的に考えるなら、聖書が隠された知識を明らかにする事実は、ソロモン王、彼の妻たち、愛人たち、乙女たちの比喩的な説明の中に明らかに示されている。ブランズウィックで1785年に出版された「薔薇十字団の秘密の図」の中でそれらは明らかにされる。この書を英語に抄訳したハルトマン博士は、ソロモン王の妻らは諸術を、愛人らは諸学を、乙女らはなおも明らかにされていない自然の諸秘密を表していると確言した。王の命により、乙女らはそのヴェールを脱ぐよう強制されるが、これは知恵(ソロモン)の方法により、神秘の術はそれらの隠された部分を哲学者に明らかにするよう強制されるのを意味する。一方、秘儀参入を受けていない世俗の者らは、外側の衣のみが見える(それらは、イシス女神のヴェールの密儀である)。


 錬金術師は大いなる作業を達成させるためには、彼の作業を4世界で同時に進ませなくてはならない。4世界での3つの原理の寓意が示される以下の表で、それぞれが支え合う様々な部分の関係を明白にするだろう。この錬金術の象徴の術の初期の師らは、これらの象徴や用語を統一させていなかった。よって、彼らの謎めいた文を解読するためには、十分な直観力とともに、この主題についての豊富な熟練を必要とする。以下の表の3と4行目には別の表現も提供している。一部の著者らは霊と魂の間に明白な線を引いていないからである。聖書では、霊は不滅であるが魂は滅する事がある。そのため、明らかにこれらは同意語ではない。聖書では「罪ある魂は死すべきである」とあるが、「霊はそれを与えた神の下へ戻らん」と明らかに述べている。可能な限り堅固にさせた寓意の表は以下の通りにである。


4世界での3つの力

世界
1.神界聖霊
2.人界肉体
3.エレメント界
4.化学界水銀硫黄

 3、4行には別の版もある。

世界
3.エレメント界
4.化学界硫黄水銀

 パラケルススは違った、どこかアリストテレス学派的な配置を作っている。ここでは、三位一体の神の3つの様相は省かれており、2行、3行、4行の世界の要素のみで構成されている。

世界
2.人界肉体
3.エレメント界
4.化学界硫黄水銀

 だがここでの重要な点は明らかである。錬金術の哲学者らは塩、硫黄、水銀の象徴を化学のみならず、神、人、宇宙の霊的で不可視の原理としても表すのに用いてきた。この3つの形質(塩、硫黄、水銀)は図で示したように4世界に存在し、それらを合わせたら、神聖数12となる。これらの12が大いなる作業の基礎であるように、これらはヨハネの黙示録では聖なる都市の12の土台石としても呼ばれていた。同様の概念でピュタゴラスも、12面体の幾何学立体が宇宙の基盤であると主張していた。フリーメイソンリーの第3位階の伝承にある、3人からなる4つの集まり、4つの部分からなる複合生物のケルビムの3天使らと、この3 x 4の密儀との間には関連が無かろうか?


中世の錬金術の象徴の図

ヴァレンティーンの「最後の遺書と遺言」より


 ヘルメース主義者らは様々な化学的要素と錬金術のプロセスを表す稀な図の中で、興味深い象徴らを用いていた。 これらの奇妙な文字らの完全な意味合いは明らかにされず、金属の霊的な性質と、それらを表すエレメンツのオカルトの秘密を、これらの文字の形の中に隠している。


 これらの寓意の中に、錬金術師らはまた人間、動物、植物の象徴も混ぜ、時には竜、翼のある蛇、ユニコーン、不死鳥といった奇妙な複合生物も加えた。ほとんどどの場合でも、象徴化された金は、王冠をかぶった王として表わされ、しばしば王錫を手に持っていた。時には、光線に囲まれた太陽の円盤として表わされた。銀は王妃と呼ばれる女性で表された。彼女は王冠をかぶってはいないが、しばしば三日月の上に立っていた。マドンナの流儀に非常に似ている。水銀は翼のある若者として描かれ、しばしば二つの頭があり、蛇や時にはカドケウスの杖を持っていた。鉛は大鎌を手に持った老人として象徴化された。鉄は鎧を着た兵士として表された。硝酸は「ダチョウの胃」という興味深い名前を与えられた。「大いなる作業」の達成は、火の巣の上に立っている不死鳥として表された。エレメンツの統一は結婚で象徴化され、腐敗のプロセスは頭蓋骨により、アンチモンは竜により表わされた。


 以下の表はヒラムを探索すべく3人(塩、硫黄、水銀)の集団が向かった4方を示している。


創造の4つの「隅」西
黄道の不動宮宝瓶宮獅子宮天蝎宮金牛宮
ケルビムの部分獅子雄牛
4季節
人の時期幼年青年成熟老年
存在の状態誕生成長成熟腐敗
人の構成の部分精神肉体
4大エレメンツ

 メイソン学者にはもう一つの表も興味深いだろう。これは、三つの形質、塩、硫黄、水銀とメイソンにはお馴染みの象徴らとの間の関係を示している。この表にもまた別版があり、これは哲学的原理の混ざり合った結果であり、年代順へと分離にするのは――不可能でなかったとしても――非常に難しい。


1. 3つの光星の火太陽の火月の火
2. 3人のグランドマスターヒラムソロモン王ティルスのヒラム王
3. 幾何学立体ピラミッド立方体
4. 錬金術の形質水銀硫黄

 2行目の別版は、


2. 3人のグランドマスターソロモン王ヒラムティルスのヒラム王

 錬金術の中にも、普遍的密儀の繰り返しが再び見つけられる。イエスが十字架で、ヒラムが神殿の西の門で、オルペウスがヘブロス川の岸辺で、クリスティナがガンジス川の岸辺で、オシリスがテューポーンに準備された棺桶の中で殺されたように、錬金術においても、エレメンツがまず死なない事には、大いなる作業は達成出来ない。錬金術のプロセスの段階は、ほとんど全ての世界の救い主や教師らの生涯と活動、また様々な国の神話の中で追跡する事が出来る。聖書の中では「人が再び生まれなければ、彼は神の王国を見る事は出来ない」と記されている。錬金術では、腐敗無しには大いなる作業は達成出来ないと宣言する。十字架の上で死に、密儀の墓の中に埋められるのと、蒸留器の中で死に、腐敗により黒くなるのとは、どう違うのか? またこれは、人が再び自らの灰から不死鳥のように蘇る、人の自然と同じではないか?


 錬金術の蒸留器の中の溶解は、十分な長さで行われるならば、形質を普遍的医薬と呼ばれる赤いエリクサーにする。これは火的な水に似ており、闇の中で輝く。この蒸解のプロセスの間、形質は多くの色を通過していき、それらはクジャクと呼ばれるが、この期間に虹色となるからである。この力の拡張が強すぎたなら、試験管の中の形質は爆発し、塵へとなる。これは人や鉱物への医薬への準備が含まれている作業の中での、一般的に起きる危険である。また開発されすぎていたら、これはガラスを通じて染み出るだろう。この形質を保持出来る程強固なものが存在しなくなるからである。この理由から、これはもはや形質ではなく、相互浸透する神力を共有する神のエッセンスとなる。これが適切に開発されたら、この液体状の普遍的溶媒は全ての他の金属らを自らへと溶かすだろう。この高い状態では普遍的な塩は液化した火である。この塩はあらゆる金属を溶かし、蒸解と循環の様々な段階を通じて走る。この強化により、やがては卑金属を変容させる医薬となるだろう。


 ヘルメース トリスメギストスの「自然の真の道」の書では、正当なメイソンのI.C.H.によれば、普遍的な塩を強化しすぎる危険について記されている。「だが、この増殖は、無限には行えず、9回の循環によって完成に到達する。このチンキが9回の循環された時、それ以上は高められない。なぜなら、さらなる分離は許されないだろうからである。物質の火を僅かでも受けたとしたら、これは即座に溶剤となり、熱い油が紙を通り抜けるように、ガラスを通り抜けていくだろう。」


 このヘルメース的医薬が作られる前に、化学的な諸要素が通過しなくてはならないプロセスの区分けが存在するが、それらに一律した用語が存在しないのは明らかである。なぜなら、「自然の真の道」ではこれらに7つの段階が与えられているが、「ヘルメース学辞典」では12の段階が記されているからだ。これらの12段階は、黄道の12宮と関連づけられているが、それらは考慮に値する。


1. 白羊宮 煆焼
2. 金牛宮 凝結
3. 双児宮 凝固
4. 巨蟹宮 溶解
5. 獅子宮 消化
6. 処女宮 蒸留
7. 天秤宮 昇華
8. 天蝎宮 分離
9. 人馬宮 焼却
10.磨羯宮 発酵
11.宝瓶宮 増殖
12.双魚宮 投入


 この配置には、興味深い推察を開き、もしも知的に運ばれるならば、この術の理解の大いなる助けとなるだろう。これらの大いなる作業の達成へと導く12「ステップ」は、古の薔薇十字団密儀の12段階を思い出させる。ある程度までは薔薇十字主義とは神学化された化学であり、哲学化された錬金術だからである。この密儀によれば、人は天の12の宮殿を通じての巡回の道を通った結果、救われるという。この12のプロセスにより「秘密のエッセンス」が見つかるとされるが、それはフリーメイソンリーの伝説にある、殺された宇宙の建設者、宇宙的な水銀を探索するために派遣された12人の職人仲間らの話を喚起せざるを得ない。


 サロモン トリスモシンによれば、物質が完成へと進む旅で通る段階は、22の部分に分かれており、それぞれは相応しい絵により表わされる。この22のトリスモシンの象徴と、22のタロットの大アルカナカード、22のヘブライ文字の間には重要な繋がりがある。これらの神秘的なタロットカードは、適切に解釈されるならば、それ自体が錬金術の形式である。中世の哲学者らがソロモン王は錬金術の師だったという主張を実証するように、フランツ ハルトマン博士によると、大いに乱用され誤解されている雅歌*3は、実際には錬金術の形式なのだという。自然哲学の学徒は、「イェルサレムの闇の乙女」とは、人物の事ではなく、賢者による聖別された物質であるのを即座に認めるだろう。ハルトマン博士は記す。「この旧約聖書の雅歌は錬金術のプロセスを記している。第1章5節で従属が記され、2章1節で百合の術が、2章4節で精製の準備が、2章7節と4章16節では火が、3章1節では腐敗作用が、3章6節では昇華と蒸留が、5章9-14節は凝固と色の変化が、2章12節と8章4節では固体化が、6章7節では増殖が、8章8節では強化と投入があるなどである。」


 哲学者の石の僅かな欠片でも、水の水面へと投げるならば、フォン ウェリング氏の書の付録によれば、自動的にチンキが――(創世記での)エロヒムの霊らのように――水面へと移動し、即座に宇宙の歴史をミニチュア的に再現するという。このミニチュアの宇宙は哲学者が確言するには、実際には水面から空中に浮かび上がってきて、宇宙の発展の全ての段階を通過していき、最終的には塵に戻る。これは金属の変容の薬となれるだけではなく、鉱物のためのチンキともなれ、これにより、みかげ石や大理石の破片を宝石へと変えられる。また低位の石の性質も増大させられよう。


 偉大な錬金術師らの一人が適切に観察してきたように、金を求めての人の探求は、しばしば彼の破滅の元となる。彼が錬金術のプロセス全ては純粋に物質的なものと信じ誤解する事によってである。哲学者の金、哲学者の石、哲学者の医薬は、4世界のそれぞれに存在し、一つの形式に則って4世界にて同時に成功裏に行わない限り、その達成は不可能であるのに彼は気付かない。さらに、錬金術の形式の構成要素の一つは、人自身の性質の中にのみ存在し、それ無しには彼の化学物質は組み合わされないだろう。彼は化学の実験に生涯と財産を費やすだろうが、望んだ結果を生み出せないだろう。これが物質科学者が、中世の錬金術師らの到達を複製することが出来ない主要な理由である――彼はあらゆるステップを慎重に正確に再現するだろうが――啓明され再生された錬金術哲学者の自然から来る微細なエレメントが、彼の実験には欠けているのである。


 フランツ ハルトマン博士のパラケルススの引用の翻訳での脚注にて、錬金術の伝説の現代の研究家の結論を明白に表現している。「私は錬金術の処方のいずれかを試みたいと考える読者に警告したいと思う。彼が錬金術師でない限り、それらはすべきで無い。なぜなら、私は個人的経験から、これらの処方は寓話的ではなく文字通りに真実であるのを知っているが、錬金術師の手により成功するだろうが、必要な資格の無い者らの手では、時間と金の無駄にしかならないだろう。錬金術師になりたいと望む者は、自らの中に「マグネシア」が無ければならない。つまり、不可視のアストラル界の形質を引き寄せ「凝固させる」磁力を持っていなくてはならないのを意味する。


 以下のページでの形式に関して、それを実践する者自体が術士マグスでなければ、諸実験は成功しないと理解する必要がある。もしも2人の人物、1人はこの至高の術の秘儀参入者でもう1人は啓明されていない者だとして、同じ道具、同じ形質、厳密に同じ作業の方法でそれぞれ行ったとしても、秘儀参入者は彼の「金」を生成するが、啓明されていない者は不可能だろう。人の魂の中に大いなる錬金術がまず起きない限り、彼は蒸留器の中での低位の錬金術を行えない。これは不変のルールであるが、それはヘルメース哲学の寓意と象徴の中に巧みに隠されている。人が「再生」しない限り、大いなる作業は達成出来ず、錬金術の形式の学徒がこれを心に留めておくならば、彼を多くの悲しみと失望から救うだろう。人の実際の自然の中にある秘密の生命原理に関連する密儀の部分について語るのは禁じられている。なぜなら、それは術の師らにより定められており、それぞれの者らが、自らにより見つけ出さねばならず、この主題を長く語るのは不法だからである。



古今の秘密の教え 錬金術の理論と実践2
↑ 古今の秘密の教え


*1 旧約聖書最初のモーセ五書。
*2 1358年 - 1421年。ドイツのヴェストファーレンの歴史家、修道院の改革も行う。
*3 文字通りの意味では、ソロモン王の歌。旧約聖書の一編で、一般には男女の恋を扱っているとされる。