召喚魔術の実践 1-9

ページ名:召喚魔術の実践 1-9

魔術の剣、短剣、三又の槍


 否定的な霊的存在や我々の物理世界へ転送されるのを好まない存在もある。それらの存在のために、魔術師が魔術の杖では充分でない場合、これらの発現を促すために魔術の剣*1が使われる。魔術の剣には様々な象徴的意味合いがあるが、一般的にこれは霊的存在や力の魔術師への絶対的服従の象徴として仕える。またこれは、あらゆる諸力や霊的存在に対する勝利と超越性の象徴でもある。


 剣は光の類似であり、火と言葉の様相である。聖書が既に述べているように、「初めに言葉――光――があった。そして言葉は神だった。」象徴主義に詳しい者なら、例えば大天使ミカエル、竜殺しの天使は、燃える剣によって象徴されるのを覚えていよう。この場合、竜は敵意、否定的原理の象徴である。アダムとイヴもまた燃える剣を持つ天使によって楽園エデンを追われた。この象徴的意味合いも極めて明らかで曖昧ではないだろう。


 魔術の剣は、魔術師が霊的存在や諸力に対して、それらの意志に反して強制的な影響力を及ぼしたい場合に道具として仕える。これは悪魔と対処する専門の魔術師には不可欠の道具であり、そのため彼らが魔術の剣を使わない限り、決して良い結果は得られないだろう。真の魔術師は通常は魔術の杖のみで充分に満足いく結果を得るだろう。だがそれにも関わらず彼は、緊急事態において便利なので、魔術の剣のような道具を作るのを拒んだりはしない。そのような魔術の剣は魔術師をより安全にする方法となり、彼の権威を強めるだろう。だが作業、特に召喚において、彼は霊的存在が強く彼に対立したり服従を拒否した場合にのみ用いるだろう。


 一部のグリモアでは、このような剣の道具を短剣と呼んでいるが、魔術の短剣は同じ種類の象徴による短くした剣以外の何物でも無い。魔術の短剣は魔術の剣と同様の方法により作られる。


 悪魔や低位の霊らを召喚する際に、剣や短剣は三又の槍トライデントで代用される事もある。この槍は木製のフォークに似た長い木の柄がある。三又の槍は剣や短剣と似て、強制のための道具である。またグリモアは三又の槍に神名を彫るのを勧めている。これに従うかどうかは魔術師の個人的な好みと、召喚の目的、魔術師の意見に委ねられる。


 また三又の槍には、魔術の剣の象徴が拡張されている。3つの頂点は我々の3次元世界を象徴し、魔術師は霊的存在に、メンタルやアストラル界のみならず、この物理世界にも、あるいは魔術師が望むなら3界全てに望みを満たさせるよう強制できる。これに関して、悪魔らは通常は三又の槍を持った姿で描かれる事があるのは注記されなくてはならない。これは愚かな者たちによって間違って考えられているような、地獄の魂らをこの三又の槍で悪魔らが突き刺しているのを意味するのではない。これは彼らの3界、メンタル、アストラル、物理界への影響力が働くのを意味するのである。


 魔術の剣、短剣、三又の槍はまた、魔術師の作業を邪魔しようとするファントム、ラルヴァエ、エレメンタルズ、エレメンタリーズといった、召喚しておらず望まない存在を破壊したり殺したりするのにも用いられる。これらの道具は他にも使い道があるが、それらはほとんど知られていないので、それも説明しなくてはならない。魔術の剣や短剣、この場合は三又の槍はほとんど使われないが、これらは魔術の避雷針としても良く仕えるのだ。


 召喚、特に悪魔の大公といった高い否定的な存在の召喚作業の後、魔術師は休息を取りたいが、これらの霊らが眠りを邪魔しないか確信が持てない場合、ベッドに魔術の避雷針を備える事も出来る。そのような避雷針は銅や鉄のワイヤーをベッドの足の部分に巻き付けて作れるであろう。それらの両端は剣か短剣に繋げなくてはならない。それから剣か短剣は床に突き刺す。ワイヤーはベッドの周りで、たとえ四角の形となったとしても、クローズドサークルを作る。剣や短剣の役割は、魔術師へと向けられた影響力を大地へと向ける事である。


 無論、ワイヤーには魔術師のどのような否定的な影響力も、ベッドの内側に侵入する事が無く、どんな存在が来てもそれらは大地へと送られると意志を込める必要がある。そのような魔術の避雷針とともに魔術的に防御されたベッドにあれば、魔術師は邪魔されずに眠り、どのような影響力も無いと保証される。どの圏から来るものにせよ、決して彼に影響を与えたり、驚かせて圧倒させたりはしないだろう。この時に魔術師が都合の良い剣や短剣を持っていなかったり、それらを他の目的のために使わなくてはならない場合、新しいナイフ、この場合、他の目的には決して使ってはならないが、これを同じ機能として使えるだろう。この魔術の避雷針は、魔術師に黒魔術の影響に対して、特に睡眠中において、守護するだろう。よく訓練され完全に開発された魔術師は、この道具無くても行えるであろう。彼は想像力によってメンタル界、アストラル界に、彼の杖や剣、短剣を用いて魔術の円をベッドの周りに描くことによってである。これもまた、彼に対してどのような望まない影響力に対しても完全な守護を与えるだろう。


 魔術の剣をどのように作るかは、個々の魔術師に委ねられている。幾つかの魔術書では、剣はかつて人の頭を切り落としたものを使うよう指示している。これは明らかに、剣を手に取るとすぐに魔術師の心に特定の畏怖、あるいはストレスの感覚を喚起するよう示唆している。通常、そのような剣を用いる魔術師は、心に正しい魔術的状態を作るために、そのような迷信を必要とする。ヘルメース的観点からは、他の全ての必要条件が存在するなら、そのような、あるいは似たような前提条件は不必要である。最良の種類の鋼鉄(製錬鋼)は、この目的のために完全に仕えられるだろう。魔術師が自らでこのような剣を作れないならば、鍛冶屋か他の金属のエキスパートに委託しても良いだろう。剣の長さは2フィートから3フィート(60センチから90センチ)で、魔術師の背丈に拠って様々である。剣の柄は銅で作られるのが良いだろう。なぜなら銅は流体の非常に良いコンダクターだからである。


 剣の形は本質的な役割を演じない。片刃のみが必要であるが、無論両刃でも構わない。だが重要な点は良く研ぎ澄まされなくてはならない。柄に適切な象徴を刻んだり描いたりするかは、魔術師の個々の好みに委ねられている。これらが魔術剣の製造法である。


 剣の充填は、全ての霊的存在に及ぶ力、戦いと生の象徴としての絶対的な勝利と尊敬といった、これに属する特質を、想像力によって転換する事で行われる。これらの特質は、繰り返しの充填により動的に強化していかなくてはならない。魔術師はまた光の流体を剣に蓄積していく事で、輝く太陽や象徴的な絵で大天使ミカエルが持つような、燃える剣のような見た目になるだろう。


 重要な点は、魔術師が魔術の剣へ向けられた態度が、彼の全ての界における絶対的な勝利の揺るがない信念が伴う事である。これにより剣に、どのような状況でもあらゆる諸力、霊的存在が恐れ敬意を持つために必要な力を与えるだろう。使用後は剣は白か黒のシルクの布で包んで、他の魔術道具のように安全な場所に保管する。


 魔術師はメンタルの旅の実践により、剣の霊的形態をメンタル界へと転換させ、彼の魔術の剣と杖を持って、惑星の諸圏を訪れる事もできよう。そこで彼は望むならば、自らの魔術の道具の助けを借りつつ、彼の魔力を用いる事も出来よう。先に述べたように、それらの圏ではあらゆる霊的存在は彼に従わなくてはならない。魔術師は魔術作業と召喚の間に、彼のメンタルの剣をメンタルの手を用いて想像力の助けを借りつつ関連する圏へ転換し、霊的存在に彼の望みを働かせることが出来る。だが、そのような力は清らかな心と高貴な魂を持つ魔術師のみが、危険なく行えるだろう。妖術師が似たような事を試みても、ただ霊的存在を怒らせるのみで、すぐに彼はそれらとその影響力の犠牲者となるだろう。オカルト学の歴史は、悲劇的な運命の例に満ちており、そのような妖術師らはさらに大きな悲劇的最後を迎えているのだ。それらの出来事の詳細について語るのは、本書の範囲を超えているだろう。


召喚魔術の実践 1-10
↑ 召喚魔術の実践


*1 日本では銃刀法により、西洋剣の実剣はどうあっても輸入も製造も不可能である(日本刀は例外扱いになっている)。模造剣で我慢しなくてはならない。