高等魔術の教理と祭儀 序文

ページ名:高等魔術の教理と祭儀 序文

Dogma et Rituel de la Haute Magie (高等魔術の教理と祭儀)


著者 エリファス レヴィ

英訳 アーサー エドワード ウェイト


ソロモンの大いなる象徴



第一部 超越魔術の教理



 古代文書の神官文字と神秘的な寓意の全てのヴェールの背後に、全ての秘儀伝授の闇と奇妙な試練の背後に、ニネヴェやテーベの廃墟の中の全ての聖典の封印の下に、アッシリアやエジプトの崩れた神殿の石やスフィンクスの黒ずんだ顔に、ヴェーダのページに触発されたインドの忠実な解釈による怪物的で不可解な絵画の中に、錬金術の古き書物の暗号の象徴の中に、全ての秘密結社による会合で実践される儀礼の中に、いずこも統一され、いずこも慎重に隠された教義の徴が存在する。オカルト学は全ての知的活動力の産婆であり代母であるように思える。神的な不明瞭さへの鍵であり、過去において王や神官たちの教育に独占的に用いられ、社会の絶対的な女王であった。ペルシアにおいてはこれらの教理はマギ僧とともに君臨した。彼らは最後には絶滅するが、それは世界中の導師達も同様であった。彼らはその力を悪用したがゆえにである。この教理はインドにも授けられた。最も驚異的な伝統と、驚くべき豊かな詩と優雅と恐怖をその象徴の内に隠しつつ。文明化されたギリシアでは、オルペウスの賛歌の曲とともに。この教理には全ての諸学の原理、全ての人類精神の進歩を秘めている。ピュタゴラスの大胆な計算の中に。その奇跡と歴史の説話の中に。説話の中からその秘められた力を探ろうと試みても、いずれも混乱とともに終わろう。その神託により諸帝国を強化したり弱体化させたりした。好奇心や恐怖により暴君たちの玉座と民の心を揺るがした。この学により、人々は言う、不可能なことは無いと。この教理によりエレメンツは命ぜられ、星々の言語を知り、その軌跡を測る。それが語られると、血の赤き月は天より落ちる。死者は墓より起き上がり、夜の風がそのしゃれこうべを揺るがすかのように不吉な言葉を呟く。愛や憎しみの女王であり、オカルト学は人の心の悦楽とともに楽園と地獄を調合する。全ての形を配置し、美と醜を贈る。キルケーの杖とともに、それは男たちを獣に変え、動物どもを男たちへと変えた。それは生と死すら変えられた。黄金と光を混ぜ合わせたエリクサーの真髄により金属を変換させたり不死にする事で、達人たちに富を与えた。
 それこそが魔術、ゾロアスターからマニに、オルペウスからティアナのアポロニウスに。アレキサンドリア派*1の大望と輝く夢に勝利したキリスト教が、大胆にもこの哲学を公的に破門とした事により、さらに秘められたオカルトと密儀へとこれらを沈殿させる事となった。さらに、秘儀参入者や達人らの周辺に関する奇妙で心配させる噂が広まった。彼らには不吉な影響力で常に囲まれ、彼らの甘言や彼らが学んだ妖術により自らに欺かれるのを許した者らを滅ぼしたり狂気に陥らせた。魔女どもを愛した者らはフクロウに変えられ、彼らの子らは夜の儀式の中で行方不明とされた。その間、人々は流血の饗宴と忌々しい宴会について秘密裏に囁き合っていた。古代神殿の埋葬室に幾つもの骨が散らばり、夜には金切り声が聴こえる。魔術師が側を通ると作物は枯れ、草は病む。常に達人らの毒気のある一瞥の下に、当時の医療を物ともしない疫病が起きると言われた。世界の呪いの叫びは魔術へ向けられ、その名は犯罪と同義語となり、大衆の憎しみはこの一句に集約される。「魔術師を火炙りにしろ!」何世紀も過去から「キリスト教徒らをライオンに食わせろ!*2」と叫ばれてきたように。さて、大衆は現実の力に対して以外には共謀しない。彼らは真理が何かは知らないが、何が強いかを直観的に知る。十八世紀までキリスト教も魔術もあざ笑われてきた。その間、大衆はルソーの演説とカリオストロの幻に熱を上げていたが。
 にも拘らず、キリスト教の源が愛であるように、科学は魔術の基礎である。それは福音書にて御言葉の生まれた*3時に星により導かれた三人の賢者らが来て崇拝するので象徴される。彼らは三つ組で小宇宙のサインであり、彼らの贈物の黄金、フランキンセンス、没薬はカバラの至高の秘密の象徴が寓話的に含まれている第二の神秘の三角である。ゆえにキリスト教は魔術を憎むべき義務はないのである。だが、人間の未知なるものへの恐怖という愚かさは決して止む事は無い。この学は盲目なる群衆の熱烈な襲撃を逃れるべく地下へと隠れた。これは新たなヒエログリフ、偽りの意図、希望の拒絶という衣を身に纏った。そして、錬金術の用語が造られ、金への物欲の下賤の者どもが入り込めない幻覚となり、ヘルメスの真の学徒のみのための生ける言語となったのである。


 驚くべき事実! キリスト教の聖書の中でも、誤謬無き教会が理解したとは主張せず、決して説明しようとしない二冊の書がある。一冊はエゼキエルの預言書であり、もう一冊はヨハネの黙示録である。二つのカバラの鍵が魔術王らのために、天で確実に保存されており、信仰深き者らのために七つの印で書は封印されているが、オカルト学の秘儀参入を受けた異教徒にとっては平明そのもの*4。また別の書もあり、それは人気がありどこでも手に入るものの、これは最もオカルトで未知の書だ。それは休息の鍵だからだ。これは公共が知らない公共の証拠にある。その存在を誰もが疑わないが、実際にどこにそれがあるか夢にも思わぬ。この書、おそらくエノクの書よりも古いであろうが、決して翻訳されず、原始的な文字が古代人らの石板のように分離した葉の上に損傷なく保存されている。この事実は気付かれるのを逃れ続けた。最も有能な学者は明らかにしたものの、それは中の秘密ではなく、その古さと変わりなく保存されてきた歴史をだ。その精神が賢明さよりも奇想天外さにある別の学者が三十年間この金字塔を研究し続けて、わずかにこの書の絶対的な重要さに気づく有様。真実、これは不朽にして驚異的な書であり、ピラミッドの構造のように強くシンプルでありながら、永久不変な全ての学の総体の書であり、その無限の組み合わせにより全ての問題を解決し、喚起した考えを語り、全ての可能な概念に対して啓発を与え調和させる。人間精神の精華であり、疑いなく古代から我々に与えられた偉大な賜の一つと数えられよう。それは普遍的な鍵であり、唯一偉大な学徒ウィリアム ポトテルによってその名は説明され理解された。それは独特の文章であり、その文章の最初の文字だけでもサンマルタン*5の献身な霊を恍惚とさせ、崇高にして不幸なスウェーデンボルグ*6の思考を回復させよう。我々は後にこの書について再び語るであろう。その数学的、正確な説明は我々の意識的な理解を完全にし高めるであろう。
 キリスト教とマギの学のかつての同盟が、ひとたび完全に説明されたら、それは最も重要な発見となろう。そして魔術とカバラの真剣な学習は、真摯な精神の学徒らを学と教義、思索と信仰、それゆえ不可能と見做されたものを調和させる事を私は疑うことが無い。
 キリスト教教会の特別な権能は鍵の管理人であるが、ヨハネの黙示録やエゼキエルの書の意味を知る振りをもしていないと私は先に述べた。キリスト教徒の意見では、ソロモンの魔術と学の鍵は失われたというが、にもかかわらず、言葉により支配される知性の領域において、書かれた何事をも消え去らないのは確実である。人々がもはや存在しなくなったと思い、少なくとも言葉の秩序において無いならば、それは謎の神秘の領域へと赴くのだ。さらに、公教会の魔術に属するもの全てに対する反感と時には開戦すらあった。魔術は個人的で宗教支配から解放する種類のものであり、さらにキリスト教聖職尊重主義での社会的階級的構造の生来の原因と必要性から、さらに弾圧する理由があった。教会は魔術を無視した――教会はそれを無視するか滅ぼすしか無かった。私が後に証明するようにである。だが教会が知らなかったのは、その神秘的な開祖がその揺り籠の中で三人のマギ*7から称えられていた事を。彼らは三つの既知の世界とオカルト学の三つの寓意的世界からの神官の大使らであったのだ。アレクサンドリア学派において、キリスト教と魔術はアンモニオス サッカス*8とプラトン学派の保護の下でほとんど手を取り合っていた。ヘルメスの教義は、ディオニュシオス ホ アレオパギテースに帰される書のほとんど全てで見つける事が出来る。シネシウスは夢に関する文書の概要を書き、それは後にカルダンにより注釈され、さらに彼が作曲した讃美歌は、スウェーデンボルグの教会儀式で使われ、啓明教会は礼拝式を持てたであろう。


 火の抽象化と熱烈な言論戦争の時代と、ユリアヌス帝の哲学的な御代は繋がっていた。彼は背教者アポスタタと呼ばれていたが、それは若い頃に彼はキリスト教に無理矢理に信仰告白させられたからである。ユリアヌスはプルタルコスの書によって悲劇の英雄であるのを誰もが知っていよう。彼は、ある者は言うであろうが、ローマ騎士のドン キホーテなのである。だがほとんどの人々が知らないのは、彼は啓明を受けた者の一人でもあり、一流の秘儀参入者なのである。彼は神の統一と三位一体の普遍的教義を信じていた。要するに、彼は旧世界の何も遺憾に思っておらず、その壮大な象徴体系と優雅な像についてもである。彼はペイガン*9では無かった。彼はギリシア多神教のアレゴリーで色付けられたグノーシス主義者であり、イエス キリストの名よりもオルペウスの名の方をより心に鳴り響くのを見い出した不幸があった。皇帝は哲学者と弁論家の学術的味わいのために、彼の人物を払った。カトーの時代*10のエパミノンダス*11のように壮観にして満足ある最期を迎えた後、その葬儀は完全にキリスト教化されたものであったが、彼の葬送辞により破門され、その最後の記念碑により嘲りの綽名を与えられた。


 では我らはローマ帝国の取るに足らない心持の者どもと小さな問題を避けて、中世へと時間を跳躍して旅立つとしよう。……止まれ、この書を取れ! 第七ページを見て、私が広げたマントの上に座るのだ。そして我々はそれぞれ、視線をその角の一つへと向けよう……きみの頭は眩暈がしなかったか? そしてきみの足元のマントが地上から浮いて飛んだ気はしなかったか? 動かないようにして、左や右を見ないようにせよ……眩暈は鎮まったか。我々はついに(中世の時代へと)たどり着いた。起き上がって目を開けると良い。だがその前に、キリスト教のサインをしたりキリスト教の言葉を唱えたりしないように気をつけよ。我々はサルヴァトル ローザ*12の描いた絵のような景色の中にいる。嵐が過ぎ去った直後の荒れた荒野のように見える。空には月が見えないが、星々の微光が茂みを照らしている。そして大きな鳥のゆっくりした戦いの音が聴こえるかもしれぬ。彼らが通るごとに、それらは奇妙な神託の囁きのようだ。静かに、岩の間にある十字路へと向かおう。――突然、耳ざわりな葬儀のトランペットの音が響き、黒い松明の火があらゆる側に起き上がった。彼ら全員がこちらをじっと見つめていて動かない。すると急に彼らは自らを地面へと跪かせた。山羊の頭をした大公が彼らを連れて前進してくる……。彼は玉座へと座り、こちらを振り向いて、屈みこんだように思えると、山羊のマスクを取って集会に自らの人の顔を見せる。誰もが近づいてきて、彼に敬礼し口づけをした。甲高い笑い声をあげると、彼はマスクをつけて元の姿勢に戻った。そして金、秘密の教授、オカルトの医薬、そして毒を彼の忠実な信者らに分け与える。その間、炎はシダと榛の木と処刑された犯罪者らの骨と脂肪を照らす。野性のパセリとクマツヅラの冠を被った女ドルイドらは、まだ洗礼を受けていない赤子らを黄金のナイフで生贄に捧げる。そして恐るべき愛餐の準備に入った。机は広げられ、マスクをつけた男らは半裸の女らの上に座り、バッカス的な饗宴が始まった。知恵と不死の象徴である塩以外のものは望まれない。ワインは川のように流れ、血のような跡を作る。猥褻が進められ、放埓な愛撫が始まる。少しすると、集会全体は酒と多淫、犯罪と歌声で包まれる。彼らは立ち上がり、そこかしこに集団となると地獄の踊りを踊り始めた……そして、全ての伝説の魔物らがやって来た。全ての悪夢の亡霊どもが。数えきれないヒキガエルらが逆向きのフルートを吹き、足で脇腹を叩く。片足を引きずるコガネムシらが踊りに加わる。蟹はカスタネットを叩き、クロコダイルらは彼らの鱗を定期的に叩く。象らとマンモスらはキューピッドのような服装で現れて足を輪の中に叩く。最後に、眩暈がするような輪が壊れ、全ての側へと飛び散る。……あらゆる踊っていた男らは、叫び声を上げつつ振り乱す女を引きずっていく。……ランプと人間の脂肪で作られたロウソクは闇へと消される……叫び声があちこちで聴こえ、そこに笑い声、冒涜の言葉、喉が鳴らされるのが混ざる。おい、目を覚ましていろ! 十字架の印を作るな! 見よ、私はきみの自宅へときみを連れてきた。きみはベッドの中にいて、少し疲れて、おそらくは先の夜の旅とその饗宴に少し動転しただろう。だがきみは誰もが知りもしないのに語る事を見たのだ。きみは聖トリフォニウスのほら穴と同じくらいに恐ろしい秘密への秘儀参入を受けた。きみはサバトにいたのだ。ここはきみの機知を保ち、法を健全に恐れ、教会とその火炙りの刑に対して敬意ある距離を保つのだ。


 きみは、他に、もっと幻想的でなくて、より現実的で、さらに真により恐ろしいものを見たくないかね? きみはジャック ド モレー*13と彼の部下どもの処刑に列席するか、彼の騎士仲間らの殉教か……だが騙されるなよ。罪ある者らと無実の者らとをだ! テンプル騎士団は本当にバフォメットを崇拝していたのか? 彼らはメンデスの山羊の尻に破廉恥な挨拶をしていたのか? 何が実際に、教会と国家を危険に晒す程の秘密と強力な組織で、そのために彼らが破滅させられたのだろうか? 簡単に判断するなかれ。彼らは大いなる罪がある。彼らは一般大衆の目に古代の秘儀伝授の聖域を曝したのだ。彼らは知恵の樹の実を集め、それを彼らのものとしようとした。それにより世界の支配者となるためである*14。彼らに下された裁きは、教皇や王の裁判所よりも高く、はるかに古いものである。「汝がそれを食べた日より、汝は死なねばならぬ」と、創世記の書で我々が読むように、神自らが述べている。では世界に何が起きたのか? そしてなぜ僧侶らや高位聖職者らをこうも恐れさせたのか? 王冠らと教皇冠らに脅威を与えたのは何の秘密の力なのか?


 少数の気違いがそこかしこを彷徨い、隠れて、彼らが言うには、彼らのぼろぼろの衣の下には哲学者の石があるという。彼らは土を黄金へと変えられると言い、さらに彼らは食べ物や宿が無くても生きられるとも! 彼らの表情には栄光のオーラと無知の影で覆われている! ある者は普遍的な学を見つけ出し、彼の勝利が産み出した苦悩から無駄に逃げ出そうとしている。彼の名は、マヨルカ人のライムンドゥス ルルス*15。別の者は、想像上の病を素晴らしい医薬により癒した。彼はかの素晴らしきパラケルスス。ラブレーの小説の英雄たちのように、常に酔っ払い、常に頭脳明晰。ここにて、ウィリアム ポステル*16は、素朴にトレント公会議の聖職者らへ向けて書いている。彼は世界の基底に隠されていた絶対的教義を見つけたと宣言し、それらを彼らに提供しようというのだ。公会議は狂人を気に掛ける事もなく、彼に有罪を宣告する事も無かった。だが、有効な恩寵と充分な恩寵についての由々しき問題を調べていった。我々が非常に貧しく捨て去られたのを見るは、コルネリウス アグリッパ。他の者よりも魔術師ではないが、大衆は彼を他の全てより妖術師として主張し続ける。なぜなら、彼は時には皮肉屋で謎めいているからだ。どんな秘密を彼らは己の墓まで持っていったのか? なぜ彼らは理解されずに放浪したのか? なぜ彼らは無知な者らから、かくも非難されるのか? なぜ、この恐るべき秘密の学の秘儀参入者である彼らは、教会と社会からかくも恐れられるのか? なぜ彼らは他の者どもが知らぬ事柄を得たのか? なぜ彼らは誰もが熱烈に知りたい事を隠すのか? なぜ彼らはこの恐ろしくも未知な力を追求したのか? オカルト諸学! 魔術! これらの言葉は全てを明らかにし、さらなる思索の種を与えよう! 全ての知識と、その他の様々なものを。
 だが、事実として、この魔術とは何であろうか? 人々がひとたび誇りにし、迫害した力とは何か? 彼らが本当に強力ならば、なぜ彼らは敵を打ち破らなかったのか? 彼らがこうも無能で愚かならば、なぜ人々は彼らを恐れることにより名誉を与えたのか? 魔術は存在するのか? オカルト知識は事実、権威ある宗教の奇跡と比較できるだけの力と驚異の働きがあるのか? これらのうちの二つの重要な質問について、宣言と書物により私は答えよう。この書は宣言を正当化させよう。そして宣言は以下のものである。かつて、そして今もなお、力ある真の魔術は存在する。魔術について語られてきた伝説全ては、ある意味において真実である。だが同時に――一般の人気のある誇張に反して、それは真理に満たない。ここには無論、格別の秘密があり、それが明かされる事により、ひとたび世界は変容している。古代エジプトの宗教伝統が証拠となり、創世記での始まりの部分でのモーセにより象徴的に要約されているようにである。この秘密は善と悪の宿命的な学により構成され、それらを社会に明かすのは死を意味する*17。モーセはそれを大地の楽園の中央に位置する*18生命の樹とその根と同等である、樹の図として描いた。この樹の元から、四つの神秘的な川が流れている。これは火の剣と四匹の聖書のスフィンクス、エゼキエルの幻視したケルビムの象徴的な形態により守られている。……ここで私は止めたい。私はすでに多くを語りすぎている……。私がここで公正に証言したいのは、世界には一つの単独にして普遍的で、消す事の出来ない教義が存在する。至高の理想のように強く、全ての偉大なもののように単純である。全ての普遍的で絶対的な真実のように知的で、さらにこの教義は全てのものの親である。また人に超人的な力を与える学もある。これらは以下の十六世紀のヘブライの文書によって列挙されている。


「これにてソロモンの鍵を右手に持ち、花咲くアーモンドの枝を左手に持つ者の力と栄誉に従え。א アレフ――死する事無く、神と面と面により会い、そして天の軍勢全てを指揮する七人の精霊(Genii)と親しく対話する者。ב ベート――全ての悲しみと恐怖の上に位置する者。ג ギメル――全ての天に君臨し、全ての地獄から仕えられる者。ד ダレット――自らの健康と生命を支配し、他の者にも同様に影響を与えられる者。ה ヘー――不幸により驚く事も災厄により圧倒される事も無く、敵に征服されない者。ו ヴァウ――過去、現在、未来の道理を知る者。ז ザイン――死者の復活と不死の鍵を知る者。
 これらが七つの主な特権であり、その下には以下の者らが続く。
 ח ヘット――哲学者の石を見つける。ט テット――普遍的な医薬を持つ。י ヨド――永遠の動きの法を知り、円の求積を証明する。כ カフ――全ての金属のみならず土や土が拒絶したものからも金を作る。ל ラメッド――最も激しい獣らも大人しくして、蛇を麻痺させたり魅了させる言葉を唱える力を持つ。מ メム――普遍的な学を与えるノトリアの術を持つ。נ ヌン――準備や学習を必要とせずに全ての主題について博識に語る。
 最後に、魔術師の最小の力は、これら七つである。
 ס サメフ――男の魂の深淵と女の心の神秘にあるものを一目で知る。ע アイン――望むならば自らを自由に自然に強制させる。פ ペー――上位の自由意志や見えない原因に関わってない未来の出来事全てを予知する。צ ツァディ――最も効果的な慰めと最も健全な助言を一度にして全て与える。ק クフ――敵に対して勝利する。ר レーシュ――愛と憎しみを征服する。ש シン――富の秘密を知り、常に主であり決して奴隷とならない。たとえ貧しくあってもそれを楽しみ、決して卑屈や惨めにならない。ת タウ――上記の三つの七集団にさらに加えると、賢者はエレメンツを支配し、嵐を鎮め、触れる事により病を癒し、死者を蘇らせる!
 だが特定の事柄はソロモン王により彼の三角の印により封印されている。秘儀参入者は以下を知るので充分である。他人については、これを嘲ろうとも、疑おうとも信じようとも、彼らが脅威を感じようとも恐れようとも、この学と我々には何の関わりがあろうか?」


 このような活動は、オカルト学から発するものであり、我々がこれらの特権を現実のものと確信した時に、我々は狂気と詐欺の疑いに遭う場所に立っている。オカルト学のそれらを証明するのが、本書の唯一の目的なのである。哲学者の石、普遍的な医薬、金属の変容、円の求積法と永久運動の秘密は、この学の神秘主義化でもなければ妄想の夢でもない。これらは、適切な感覚のもとで理解されなければならない用語である。これらは様々な応用に定式化され、同じ秘密、一つの作業の様々な様相がある。それらは大いなる作業という名の下で、より包括的な形で定義されている。さらに、この自然に存在する力は蒸気よりも強力であり*19、この力を得て操作できるようになった個人は、世界全体の命運を変える事も出来よう。この智からは古代人らには知られており、それは至高の法と同等の普遍的な原動力で構成され、その方向は超越魔術の大いなる奥義と直接的に関連している。この原動力の方向により、季節の順番を調整したり、夜に昼の現象を引き起こしたり、地の端にあるものと別の場所にあるものを即座に関係づけたり、アポロニオスのように世界の反対側で何が起きているのかを見たり、離れた場所から他人を癒したり傷つけたりし、普遍的成功と反響の発言を与えたりするのが可能となる。この原動力、メスメル*20の信奉者らの不確実な技法によりわずかに現れるものは、まさに中世の達人らが大いなる作業での第一原質と呼んだものであった。グノーシス派はこれを聖霊の中の火の体として表わした。これはサバトや神殿での、バフォメットやメンデスのアンドロギュヌスのヒエログリフ的な像の下での秘密儀礼での崇拝の対象であった。これら全ては後に証明されよう。



高等魔術の教理と祭儀 序文2
↑ 高等魔術の教理と祭儀


*1 エジプトの港町で古代で70万巻の世界最大の図書館があった。この智を憎むキリスト教徒の放火により5世紀に滅亡。
*2 古代ローマでキリスト教弾圧の一環として、競技場で信者をライオンに食わせていた。
*3 イエスのこと。
*4 ウェイト注。後のレヴィの「カバラの神秘」p241では、黙示録をカバラの鍵とは見做さず、秘儀参入の学の縮図、象徴としている。
*5 「ウェイト注。サンマルタンはタロットについて何も知らなかったが、彼の書の一つはタロットの大アルカナの数である22章で構成されている。」ルイ クロード ド サンマルタン(1743年 - 1803年)はフランスのユダヤ、キリスト教神秘主義団体のマルティニスト会の創設者。
*6 1688年 - 1772年。スウェーデンの科学者、神学者、神秘主義者。主著は霊界日記。晩年は発狂したという説もある。
*7 魔術師Magicianの語源となったペルシア僧。
*8 3世紀前の神秘主義哲学者。
*9 文字通りの意味では異教徒。ここでは古代ギリシア、ローマの多神教徒。
*10 紀元前234年 - 紀元前149年。共和制ローマの政治家。
*11 紀元前418年 - 紀元前362。ギリシアの将軍、政治家。マンティネノアの戦いで戦死。
*12 17世紀のナポリ出身の画家、詩人。
*13 1244年 - 1314年。最後のテンプル騎士団総長でフランス王に火刑にされた。
*14 ウェイト注。この告発の趣旨ははっきりとはしていない。だが、拙訳のレヴィの「魔術の歴史」第2版(1922年)で、テンプル騎士団の章にある内容は、以下の「大いなる密儀の鍵」359-360ページのものと比較できよう。「メイソンリーの名と属性は、カバラでの普遍的な夢であったソロモン神殿の再建を表している。」そしてレヴィは支配者を表す格言を適切に引用している。「神殿が即座に現実化できる建物だと考える真のユダヤ人は居ない。なぜなら、彼はそれを自らの心に再建するからだ。理想社会と完全な政府の象徴は美点と知性の民主的な構造の上に建てられる。東洋で秘儀参入されたテンプル騎士団は真に恐るべき陰謀者らであり、教皇や王らは自らの身を守るためには彼らを破門するしかなかった。」心に建てるという意味については、コンスタンティヌスの赤十字のメイソンの儀礼を参照せよ。また、テンプル騎士団による秘密の事柄の裏切りについてはウェルナーの「谷の子ら」を参照せよ。
*15 カタルーニャ語ではラモン リュイ。1232年頃 - 1315年。スペインの東のマヨルカ諸島出身の神学者、哲学者、神秘家、錬金術師。賢者の石を発見したという伝説がある。
*16 1510年 - 1581年。フランスのカバラ学者、占星術師、外交官、言語学者。
*17 ウェイト注。これは「大いなる密儀の鍵」241ページの文と比較できよう。「世にはある教義、鍵、深遠な伝統がある。そしてこの伝統、この鍵、この教義は超越魔術である。これらのみで、学の絶対を、法の永遠の基盤を、全ての迷信と誤りへの防御を、理解のエデンを、心の平静と魂の平和を見いだせる。」
*18 ウェイト注。創世記によれば、命の樹は楽園エデンの中央に置かれたとある。
*19 蒸気機関は当時の人類が持てた最強の力である。
*20 フランツ アントン メスメル。1734年 - 1815年。ドイツ、フランスで動物磁気による治療をする。現在ではそれらは催眠術と考えられ、同術の祖とされる。