明かされたカバラ 新版への前書

ページ名:明かされたカバラ 新版への前書

カバラ デヌダタ


明かされたカバラ


ゾーハルの以下の書を含む

隠された神秘の書

大聖会の書

小聖会の書


英訳者 サミュエル リデル マクレガー マサース

1912年


献辞


「完全な道」著者 アンナ キングスフォード医学博士と

エドワード メイトランド氏に

本訳書を捧ぐ。



新版への前書


モイナ マクレガー マサース


 我が亡夫の弟子として、そして後には彼のより秘教的な研究の協力者として、私はこの機会に彼自身と本書について語らせてください。1918年の彼の死から、私は世界中の彼の書の学徒らから数えきれないほどの手紙や訪問、照会を受けてきました。ほとんどのそれらの質問は彼のより秘教的な知識に関連するものなので、私は彼自身の言葉を引用させて頂きたいと存じます(序説13ページの第22節を見てください)。「書かれざるカバラという概念は、カバラのある種の知識は決して書物に任せられる事は無く、口承によってのみ伝えられるのを意味する。私はこれ以上これについて語る事はせず、私がそれを受け取ったか否かすら述べられない」。


 1887年のこのカバラの書の出版と同時に、彼の秘められた教師らから、やがて秘教の学院となる組織*1の準備をするよう彼は教授を受けました。やがてこの関係で、彼はウッドマン博士とウィン ウエストコット博士と知遇を得る結果となりました。このお二方とも有能なメイソン会員でカバラ学者です。彼らと我が夫は、英国薔薇十字協会や他の幾つかのメイソンリー結社で高い位階にありました。


 1887年に、この「明かされたカバラ」の初版が世に出てから、思想界全体の関心がオカルト哲学と科学へとかなり向けられるようになりました。前世紀の終わりからの科学による巨大な進歩は、実践的な証明による様々な驚異的な事実が明らかにされ、同時に大いなるオカルト運動の進歩は、全ての思弁のある人々に、この星の進化にある差し迫った変化がある証拠として突きつけられています。物質科学は自らをより霊的な方向へと向け、オカルト科学は自らを物質化させるでしょう。留まろうとする手が無ければ、彼らは確実にこの方向へと試みるでしょう。古代の知恵、聖なる書らは教えています。我々は霊を理解しない限り、物質も理解できないのです。物質と霊は同じ宇宙的な形質の対立する極にすぎません。カバラ全体はこの格言に貫かれています。「マルクトはケテルの中に。そのケテルはマルクトの中に」。同じ考えはグノーシスの教えでも繰り返されています。「天の中に地があり、地の中に天がある」。


 宗教にはその言葉があります。科学にはその提案と実証があります。哲学にはその系統だった理論があります。芸術には創造性と理想があります。ですが、これらの本質的な分離は人類の霊性が留まる事無く求めている統合的理想を満たしていません。これらは人類の絶え間ない叫びとして残っています。実存の問題に対してのこの難しい要求になかなか解決が無い事への世界の嘆きです。この人類の霊の叫びへの古代世界の返答は、様々な密儀の成立の中に見出せます。これらの奥義の部分に含んでいるものは、たとえ最高の宗教の知られている形態の中にも含まれていません。つまり、生と死や、自然や、神々や、霊的存在などの諸問題への、さらにその究極的には万物の最初の原因へ帰還する儀礼と形式の中に込められた哲学・宗教的な返答です。


 1888年に、この「明かされたカバラ」の出版の後、我が夫は彼の秘教学院の作業を始めました。オカルト結社の連続した歴史を書くのは、達人の生涯を書くのと同じくらいに非常に難しい事です。両者とも内的で秘密にすべき事が多いからです。歴史的なものの中にも象徴主義的なものも多くあり、後者での象徴主義もです。


 教授の一般的な構造、作業の枠組みは、彼の秘められた教師らから膨大な口述の伝授とともに与えられました。この学院を建てる目的は、古代で密儀の祭儀のための広場に建てられたものと似ています。この学院の文書は、少しの例外を除いて、これらの教師らの指導の下に、主にエジプト、カルデア、ギリシアの古代密儀を基礎として、そして現代の精神性の必要に向いているようにして、我が夫が書いたものです。この西洋のオカルティズムに大きく向いている体系で、一般生活を送っている人が従えて、その至高の感覚を理解できる内容です。ウッドマン博士とウィン ウエストコット博士がこの学院の管理側と一部の教授で助けを頂きました。


 先駆者の運動として、その時代より先に進み過ぎていたため、最初の10年から12年は多くの困難に直面しました。ですが私達が(秘密の首領らから)言われたのは、最初の頃は実験段階で、やがては学徒らはふるいにかけられるとの事でした。ウッドマン博士は1890年に亡くなり、ウィン ウエストコット博士は1897年に引退しました。その後、我が夫は組織を全面的に改編し、その先の教授も彼に与えられました。その教えは主に、儀式と儀礼と講義でした。大望と生活の清浄さは、学徒の最初にして必要不可欠な要求項目でした。魂、精神、肉体はこれらを基にして、同時に開発されるのです。カリキュラムは自然の背後にある知的な諸力、人間の構成、その神との関係を含んでいました。この教授の全体的な目的は、人に自らの至高の自己の知識をもたらし、自らを清め、強め、存在の全ての力と性質を開発する事でした。そして人は究極的には自らの中に隠れている神人と再び一つとなるでしょう。それは神が自らの像として造ったアダム カドモンです。


 この友愛団の理想は非常に高いものでした。友愛団の権威は利他的な要素と加えて、常にオカルト結社の本質的な要素でした。霊的にも心理的にもです。このサークルの調和の中にあるどんな裂け目も、反対の力が入るのが許すでしょう。経験のある心霊主義者はこの言葉の真理の証人となるでしょう。


 全ての聖典、我々の聖書にせよ、カバラにせよ、エジプトの書にせよ、ヴェーダの教えにせよ、ドルイド伝統などにせよ、薔薇や百合や蓮華や十字架の象徴は、ある偉大で本質的な真理の生ける真実の像としての自己を明らかにします。どのような団体、結社、学徒の集団にせよ、宇宙が顕現した構成と性質について学ぶ目的ならば、薔薇や百合、蓮華と十字架の象徴主義へと入るのは避けられないと私は断言します。薔薇、その神秘的な中心、その花弁、中央の太陽は、自然の調和された分離と無限の象徴なのです。


 百合や蓮華の象徴は薔薇と似ていますが、わずかな違いがあります。


 十字架の象徴は新約聖書での実質的な主旨であるのを我々はよく知っています。これは自然の四要素、神の御名I.H.V.H.テトラグラマトン、ヤハウェの四文字であり、これに聖霊のシンの文字を加えたら、イェヘシュア、救い主の名前となります。錬金術では、霊的なものにせよ物理的なものにせよ、究極の秘密は十字架の中心を見つける事だと言われています。この四文字の御名の真の理解は、これには自然の四つのエレメンツ、風、水、火、地の力を含み、これらの最低の部分から最高の相までです。それは創造と破壊の知識と力を暗示します。それが理由で、カバラ学者らによりこの御名を唱えるのが禁止されていたのではないでしょうか? この御名は至高の秘儀参入を受けた秘儀参入者、すなわち「第一動者とその意志を学んだ者」によってのみ発音されたと古代の知恵は示唆しています。


 一神教、多神教、汎神論の違いについてですが、この違いは秘儀伝授者にとってはほとんどありません。確かに、単独の神と至高の諸力の調和との間には小さな違いがあります。絶対的には繋げるなら、個々の部分の多数の行動は統一され、多数の行動からなる統一となるでしょう。


 科学とその「ミッシングリンク」については、宇宙には虚無の場所は存在せず、その「ミッシングリンク」は不可視の世界に見つけられると、オカルト科学は強く主張します。現代科学と哲学では、我々の物理的な感覚には限界があり、より微細な方法により知覚するものに比べて、ごくわずかなものしか認知出来ないとたびたび示しています。オリヴァー ロッジ卿はこう述べています。「自然科学者は直接的な感覚の印象のみに決して制限していない。彼は複数の概念や彼には何ら物理的な器官が無いものとも対処しなくてはならない。例えば、力学理論の熱や、ガスや、電磁気学や、磁気や、化学親和力や、分子の凝集力、うむ、エーテルそのものの彼の理解は、視覚、聴覚、触覚は直接的な観測として不能である領域へと彼を導く……そのような領域では、何もかもが非感覚的な、明白に非物質的な、そして感覚の定義における想像力の用語により解釈されねばならないのだ。」彼はさらに言います。「私はものの階級の存在を合理的に確信している。それは人間よりも低い存在のみならず、高い存在についてもである。ゼロから無限に至る巨大なあらゆる階級の程度についてだ。そして、これらの存在のうちに、ある者は人類を助け導くと私は経験から知っている。さらに、私の信念では――もっとも謙虚に保持しているが――これらの高尚な存在らのうち、無限の空間の諸世界の中で自らをこの地上と直接関係する最高の者は、「一者」であり、キリスト教の正しい直観が常に心から崇拝してきた者である。ほとんど同様のことをエジプトの象徴主義にもある。ヤコブが天と地を繋ぐ梯子と、そこを神の天使らが上昇し下降するのを幻視したように、神々と自然の調和された繋がりは存在する。また、エジプトの、カルデアの、中国の、インドの、その他の場所にせよ、あらゆる古代の考えにおいて、至高の神より神々、天使、霊、精霊、魂、我々の生、霊的存在、究極的には地の聖なる動物から、木々や植物、鉱物に至るまで、途切れない鎖の概念があった。ではそのような鎖は、万物をこの神的な源へ繋げられるだろうか? 確実に、それは降下する神的な影響メズラ、聖なる神的な霊の影響以外には行えない。」


 この神的な霊をその三位一体の顕現から取ると、これは光、生命、愛と呼ばれ、あるいは父、子、聖霊と呼ばれる。あるいは父、母、子です。ラジウムの性質は古代の一つのエレメントと非常に似ています。その三位一体の顕現はアルファ、ベータ、ガンマ線を通じてです。


 見者と霊媒に関してですが、先に述べたように、私たちの学院は大まかに言って存在の3つの階層を同時に開発していくのを強調しています。これらの開発はサイキックな経験の前に進めないといけません。この自然を平衡させるのに用いる技法は、かなりの学習、時間、忍耐を必要とします。どのような学にせよ王道*2は無く、オカルトの学でも言うまでもありません。霊的な能力を得るといったような実験をする前に、学徒は彼が出会うであろう霊的存在の自然や、特に人の構成の考えにどれだけ熟達しているかテストされる事になっています。これらが達成されたなら、彼は不可視の世界で出会うであろう多くの危険や困難に向き合えるよう準備が出来ているでしょう。


 アストラル界は様々に分割されており、その中のいくつかは見者により冒険が記されています。この界は鏡をはめられた広間に例えられるでしょう。ここでは、目の回るような反射像と向き合います。ここには、多くの、そして様々な霊的存在が現れます。


 心霊主義は疑いなく西洋の運動であり、確実に多くの人に死後の世界についての確信を与えました。心霊主義者に用いられた技法は、非常に危険なものになり得ます。彼らはこのサイキック現象に向き合う前に必要な特定の知識に欠けているからです。この特定の知識に欠けた心霊主義者は、未知の土地の探検者に付きまとう全ての危険に出会う覚悟が必要です。この領域に入った者は、時には扉を開く方が閉じるよりも容易だったりするのです。


 我が夫の生涯に興味のある方のために、少しお話ししましょう。子供の頃から彼は神秘主義と一般的な象徴主義に興味がありました。彼はベッドフォード中学校で教育を受け、古典を専攻しました。この間、空いた時間で彼はケルトの伝統と象徴主義を集めて調査しました。この彼のケルトの象徴への愛は、彼のスコットランド、ハイランド地方の先祖から受け継いだものです。彼の先祖、グレンストレーのイアン マグレガーは熱心なジャコバイト党員*3で、1745年の反乱の後にフランスへと逃亡し、ラリー トレンダル将軍の指揮下でポンディシェリ*4で戦いました。この先祖はルイ15世からグロンスタル伯爵の称号を頂きました。このフランス称号は我が夫が継承し、彼はフランスに住んでいた時は常に使用していました。若者として彼はケネス マッケンジーと知り合い、それにより強いオカルトの繋がりを持ちました。メイソンリー百科事典の著者のケネス マッケンジーはブルワー リットン卿の親友でした。この英国に隔離されていた時期、我が夫は未来の作業のための準備に学生生活を費やしました。やがて彼はアンナ キングスフォードと出会ったのを縁にブラヴァツキー夫人を紹介され、夫人は新たな組織の共同設立者にと彼を誘いました。思案の末、この卓越した女性への心からの敬意に関わらず、この招待を彼は断りました。彼らの理想は完全に同じでは無かったのです。この頃、彼はアンナ キングスフォードの秘教的キリスト教と女性の権利の向上の方により共感があったのです。さらに、彼女の生体実験への反対運動に深く関心があり、精力的に協力しました。3、4年後に、彼は自らのオカルトの教師らにパリへと引っ越すように伝えられ、ここで夫と私は残りの生涯を過ごしました。私はここで我が感謝を我がオカルトの師らに、そして私の道を照らしてくれた我が夫、同志、教師の記憶に深い感謝の念を捧げたいと思います。


 モイナ マクレガー マサース


明かされたカバラ 序説
↑ 明かされたカバラ


*1 言うまでも無く、黄金の夜明け団のこと。
*2 早道のこと。
*3 1688年イギリスで起こった名誉革命の反革命勢力。追放されたスチュアート王家を支持する。
*4 インド南部の当時のフランス植民地。