アブラメリン 1-6

ページ名:アブラメリン 1-6

第6章


 主への畏れは真の知恵であり、それらを持たない者は魔術の真の秘密へは到達できず、砂の上に建物を建てるようなもので、その建物は長くは持つまい。ラビ モーシェは私に賢者たれと述べていたが、彼自身は自らも他人も理解できない言葉や、奇妙な象徴が彫られたベルを用いて、忌わしいまじないにより鏡に盗人を映したり、老人を若返させる(だがそれは2時間のみで、それ以上では無い)水を造ったりした。これらの事の全てをラビは無論、私に教えたが、これらは単に無益なもの、低次元な好奇心、悪魔の純粋な欺きであり、想像できる何の有用性も無く、魂を失わせる事が多いのである。そして、私が神聖魔術の真の知識を持った時、これら全てを忘れ、我が心から追い出したのである。


 また、かの不信心なボヘミア人*1は、その助手らの助けを借りつつ、驚くような事をなしていた。自らを不可視としたり、風の中を飛んだり、密室に鍵穴を通じて入ったり、我らの最大の秘密を知ったり、また神のみぞ知るような事を私に語ったりしていた。だがその術は彼には大きすぎる代償であり、悪魔はこの秘密の術の全てを神の不名誉のために、隣人らを苦しめるために用いるように誓いを立てさせていた。最後には彼の死体は町の大通りを引きずられた姿で見つかり、その頭からは舌が抜き取られていて、乾燥して横たわっていた。そして、これが彼が、この悪魔的な学と魔術から引き出した全ての利益だったのである。


 オーストリアでは、私は多くの魔術師と出会ったが、彼らの関心は人々を殺したり傷つけたり、夫婦の仲を裂いて離婚させたり、赤子を養う母の乳が出ないようにと、ヤナギの枝で魔女の結び目を造ったり、その他の似たような悪事のみであった。だがこれらの惨めな悪党らは、悪魔と契約を結び、その奴隷となり、全ての生き物を滅ぼすように止まる事なく働くと誓っている。ある者は(契約で)2年間は働き、ある者らは3年間で、その後には、先のボヘミア人と同じ運命に彼らは陥ったのである。


 リンツでは、私はある若い女と働いていた。彼女はある夜、私を家へと招待し、何のリスクも無く私が見つけたいと強く望んでいた場所へと案内すると保証した。私は彼女の約束に従う事にした。それから彼女は軟膏を与え、私はそれで手のひらと足首の下を擦った。また彼女も同様にした。やがて私は望んだ場所の空中を飛んでいる感覚があり、その場所について私は彼女には何も言っていなかった。私が見て、驚き、長い間留まった場所から、沈黙と敬意と共に過ぎると、あたかも深い眠りから目覚めたように私は感じて、強い頭痛と深いメランコリーがあった。私は周囲を見渡すと、我が横の椅子に彼女が座っているのを見た。彼女は自分が見たものについて私に語ったが、それは私が見たものとは完全に違っていた。だが私は大いに驚いていた。なぜなら、私が実際に完全にあの場所にいたように感じて、実際に起きた事を見たからである。だが、ある日私は彼女に、200リーグの距離にあるこの場所へと向かって、私が確実に知っている友の知らせをもたらすように尋ねると、彼女は1時間で行うと約束した。彼女は先の軟膏で手足を擦り、私は彼女が飛ぶのを見るのを強く期待した。だが彼女は地面に倒れて、3時間の間そこに死者のように留まり、そして私は彼女は実際に死んだと考え始めた。やがて彼女は目を覚ました人物のように体を動かし、起き上がった。そして大いに喜びとともに彼女の探検についての内容を私に語り始めて、彼女は我が友がいる場所と行っている事全てを述べた。だが、それは彼の実際の仕事とは完全に逆の事だった。これらから、彼女は単に夢を語っているのにすぎず、この軟膏は幻想的な眠りを引き起こすものだと私は結論した。またこの軟膏について、彼女はこれは悪魔から与えられたものだと告白した*2


 ギリシア人らの術全ては、まじないと魅惑の術であり、悪魔はこれら告発された術で彼らを魅惑させ、それらより強力であろう真の魔術の基盤が彼らには未知のままにしていた。私はこれらについてより確信があり、なぜなら彼らの作業は何の実用にもならず、実践する者に損傷をもたらし、事実、私が真にして聖なる魔術を持つようになると、彼らの多くが率直に認めていた。また、古代のシビラの術から来たと彼らが述べる多くの作業もあり、白と黒と呼ばれる術もあり、他にも天使的*3、テアティムの術もあった。これらの祈りは博識で美しいものであり、その中に毒が隠されていると私が知らなかったら、人々に伝えていたであろうと告白する。私がこれら全てを述べるのは、常に自らを過ちから守ろうとしない者は、これにより容易に過てるだろうからである。


 ある老人の象徴の物書き*4は私に多くのまじないを教えたが、それらは悪の作業にのみ片寄っていた。老人は数を用いた他の作業もしていたが、それらは全て奇数で3の比率があり、他の術とは似ておらず、この証明として、老人は私が滞在していた場所の近くにある非常に美しい木を大地に倒れさせ、全ての葉と果実を非常に短い時間で消滅させた。そして老人が私に語るには、この数の中には大いなる秘密が隠されているという。なぜなら、この数の作業により、魔術師は友情、富、名誉、全ての善や悪の事柄をなす事が出来るからであると。だが、老人はこれらを試みて、彼が真実だと知るものも、まだ成功していないと告白していた。そしてこの失敗の理由について、私は賢者アブラメリンの教えを通じて見つけた。賢者は私に、これは神の神秘、すなわちカバラから来て、拠っているものであり、このカバラ無しには成功できないだろうと述べていた。私はこれら全てや多くの他のものも見ており、これらの秘密を持つ方は、私に友情の証として与えている。私はアブラメリンの家を出てから、これらのレシピの紙を燃やした。なぜなら、これらは神の意志から非常に遠く離れていて、我々が隣人に負っている博愛にも反していたからだ。あらゆる博識あり分別ある者らも、主の天使により守られていなければ、堕落するであろう。この天使らは我らを助け、このような悪しき状態に落ちるのを防ぎ、価値無き我らを闇の泥沼から真理の光へと導くのである。私は賢者アブラメリンの善の効果を知り、感じている。この賢者は自らの自由意志により、私が弟子入りを述べる前に、その弟子として受け入れたのである。そして我が望みについて述べる前に、我が望みの全てを果たし満たしたであろうし、私が口を開く前に、我が得たい望みを全て知っていたであろう。また、アブラメリンは我が父の死から今日までの、私が見て、行い、苦しんだ全てのものを述べている。そして、これらの言葉は曖昧で預言的であり、当時は考えられなかったが、後になって私は理解した。アブラメリンは私に幸運についての多くの事を述べているが、その主要なものとして、カバラの真理の源を明らかにしたのである。このカバラは我ら(ユダヤ人)の習慣に従い、私は長男のヨセフにそのまま伝えた。その後、アブラメリンはカバラと神聖魔術の達成がそれ無しでは不可能な必要条件について述べて、それらを私は以下の2冊の書で述べるつもりである。その後、アブラメリンは神聖魔術の神秘の処方について私に明らかとした。これらは我らが父祖ノア、アブラハム、ヤコブ、モーセ、ダヴィデ王、ソロモン王が実践してきたものだが、ソロモン王は悪用したので、その生涯の間に懲罰を受けている。


 この神聖な書の中で、私は誠実に明白に全てを記すつもりである。主なる神が汝が大人になる前に私をこの世から去らせる場合に備えてである。汝はその時には、この3冊の小著を、値のつけられない宝で、かつ誠実な教師として見出すであろう。なぜなら、この第3の書の中では多くの秘密があり、それらは私はアブラメリンの試みによって私自身の目で見てきたものであり、完全に真実であり、その後に私自身でも行ったものだからだ。そしてアブラメリンから去った後、私はこれらの事を真に行っている者には出会えずにいる。パリのヨセフは同じ道を歩んでいたが、神は公正な裁きとして、彼に神聖魔術の全てを与えずにいた。なぜなら、彼はキリストの法を捨てたからである。キリスト教、ユダヤ教、多神教、トルコ人の宗教、異教徒、その他どの宗教のもので生まれた者にせよ、この術や作業を完成させられるが、自らの自然の法を捨てて、自らのものと対立する別の宗教を受け入れた者は、この神聖な学の頂点には決して到達できないのは、疑い無く明らかな事だからである*5


アブラメリン 1-7
↑ アブラメリンの書


*1 マサース注。先の章で述べていたアントニーの事である。
*2 これは所謂「魔女の膏薬」であるのに間違いない。似たような軟膏を魔女が体に塗って、肉体が仮死状態となり、その間に意識はサバトへと向かって、そこで幻想的な体験をする多くの話が、魔女裁判記録に残されている。体外離脱体験を誘引するドラッグの類であろう。
*3 マサース注。「アンブロシウス」の書の事か?
*4 マサース注。明らかに、第5章で記されていたコンスタンティノープルの近くのエピハで住んでいた者である。ここで私が「象徴の物書き」と訳した言葉は、grifasである。
*5 マサース注。多くのオカルティストは、疑い無くこの意見には反対するであろう。堕落して物質主義化した1つの宗教の宗派から別のものにするのは、おそらく大した差がなく、全ての基盤である真の宗教を探す事とは大きく違っており、宗派から自由でないものは、完全に真理とはなり得ないであろう。