ストーリーテキスト/第六回名城番付

ページ名:ストーリーテキスト/第六回名城番付

目次

第六回名城番付[]

名城番付 西軍初級の段

一行が一時の安寧を謳歌していたある日、
所領に一人の城娘が姿を現した。殿の姿を捉え、
瞳をキラキラと輝かせる彼女の目的とは……。

前半
やくも

んぇ~……退屈だにぃ……。

千狐
まったくやくもは……。
しばらく平穏が続いてるからって、まただらーっとして……。

???
あのー、ごめんくださーい……。

やくも
ん……? 来客だに……?

千狐
そのようだけど……どなたかしら……?

沼田城
私、沼田城という者なのですが……あら?
そちらにいらっしゃるのはもしや、御屋形様ですか?

殿
…………。

殿
…………!

沼田城
はい、はじめまして! お会いできて光栄です♪

沼田城
それから、あなたたちは……おお! お噂はかねがね!

沼田城
感動です……!
話に伝え聞いた方々が今、私の目の前にいるだなんて……!

やくも
何だか、えらく喜んでるみたいだに……。

やくも
って沼田城……?
どっかで聞いた覚えのある名前がや……。

柳川城
沼田城さんといえば確か、
名胡桃城さんの結界で守られている城娘だったかと……。

千狐
あ……思い出しました。
あの時は、お顔を見ることはできませんでしたが……。

沼田城
はい、その話は支城たちから聞き及んでいます。
あの時は力を貸していただき、ありがとうございました。

やくも
今日は一人でここまで来たがや?
名胡桃城は一緒じゃないんだに?

沼田城
…………。

沼田城
実はその……私、この度……、
名胡桃ちゃんの許から脱走してしまいまして……。

やくも
脱走……!?

柳川城
脱走とは、いったいどうして……?

沼田城
もちろん、支城の皆に守ってもらっていることには、
日頃より感謝しております……。

沼田城
だけど、だけれどもですよ!

沼田城
物事には限度というものがあります!
そして名胡桃ちゃんの護衛は限度を超えています! あまりに過保護です!

沼田城
自由に動き回れるのは御城の中だけで、
日々の変化といえば空模様と献立ぐらい……。

沼田城
このままだと全身がコケやツタで覆われてしまいます!

沼田城
というわけで私、名胡桃ちゃんがうたた寝をしている隙を突いて、
御城を抜け出してきたのです……。

千狐
なるほど、それで所領まで……。

沼田城
はい……こちらには、
古今東西を問わず多くの城娘ちゃんがいらっしゃると聞きましたので……。

沼田城
御城での暮らしに戻るまでに、少しでも見識を広められれば、と。

やくも
うーん……確かに、所領に居る城娘も少なくないけど、
みんながみんなここに居るわけじゃないだに……。

千狐
えぇ……有事に備え、自身の御城で待機している方も多いです。
なので、古今東西と言われると……。

沼田城
なんと……そうだったのですね……。

沼田城
では……筆と紙をお借りすることはできますか?
お手紙を送ることにしようかと思うのですが……。

千狐
手紙……ですか?

沼田城
お会いすることができないのなら、
まずはお手紙で仲を深めようかと思いまして。

沼田城
私、知らない文化や知識に触れて、
色んな城娘ちゃんとお友達になりたくて、ここまで来ました……。

沼田城
これまでの寂しい思いを帳消しにできるくらい、
にぎやかで楽しい時間を過ごしたいのです……。

やくも
手紙には、どんなことを書くんだに?

沼田城
手紙には……そうですね。

沼田城
それぞれの城娘ちゃんたちの、素晴らしい点をご紹介いただく……、
というのは、いかがでしょうか。

沼田城
どんな些細なことでも、
それに、ご自身だけじゃなくお友達のことでも……。

沼田城
この世界に居る城娘ちゃんたちの素敵なお話を、一つでも多く知れたら……。
私、御城を飛び出した甲斐があったな、と満足できると思うんです。

やくも
でも、そしたら……手紙をえっぱい送らなきゃならないがや。

沼田城
えぇ、そうですね……西に、東に……それから海の向こうにも。

沼田城
……少々手間は掛かりますが、
交友を広げられると思えば、苦労の内には入りません♪

やくも
よーし!
それなら、うちも沼田城の手伝いをするだに。

沼田城
まぁ……やくもちゃんも?

やくも
沼田城の手紙への返事……、
きっとそこには、美味い料理の話も書かれてるに違いないがや!

やくも
何なら、この機会を利用して、
投票形式で一番を決めるのも悪くないだに♪

沼田城
競争にしてしまうのですか? 大胆な発想ですね♪

千狐
投票って……。
前にも似たようなことをやった気がするけど……。

やくも
何度やったって足りるということはないがや!
あれからいろんな城娘さんとも知り合ってるし!

柳川城
……ふふっ、
なんだか急に忙しくなってきましたね。

柳川城
私もお手伝いしましょうか。
沼田城さん、異国に送るお手紙については任せてください。

沼田城
ありがとう!
やくもちゃんも、柳川城ちゃんも助かります♪

やくも
それじゃ、さっそく準備を始めるだに!

千狐
…………。

千狐
ま、待つなの! 千狐もお手伝いするのー!

――――。

数刻後――――。

沼田城
さぁて、これでお手紙は全て送りましたよ♪

沼田城
楽しみですねぇ、楽しみですねぇ……。
早く返事、来ないかしら……。

千狐
沼田城さん……さっきからずっと外を眺めてます……。

やくも
手紙が返ってくるまで、ああしてるつもりだに……?

柳川城
外に出られたことが嬉しくてしかたないのでしょうね……。

やくも
ずーっと自由に出歩けてなかったって言ってたがや……。

千狐
…………。

千狐
沼田城さん。

沼田城
千狐ちゃん……?

千狐
お手紙が返ってくるまでは、まだ時間があります。

千狐
ですから、それまでの間……辺りを一緒にお散歩しませんか?

沼田城
お散歩……ですか?

千狐
ええ……千狐には転移の術がありますから、
色々と融通を効かせられますし。

沼田城
そんな、願ってもないことです……ですが、よろしいのですか?

沼田城
千狐ちゃんの聖なる力を、こんなことに使うなんて……。

千狐
幸い、今は休息をとった直後ですから。
多少転移を繰り返したくらいでは、問題にはなりません♪

千狐
手紙が返ってくるまでの間ですから、
そんなに遠出はできないかと思いますが……。

沼田城
充分です! ありがとうございます、千狐ちゃん♪

殿
…………。

殿
…………!

沼田城
えぇ、ぜひ御屋形様もご一緒に♪

やくも
そんじゃ、みんなで一緒に遠足だにー♪

数刻後――――。

沼田城
すごいです~!
こんな景色、御城の中では絶対味わえません♪

やくも
沼田城……嬉しそうだに……。

千狐
ふふっ、連れてきた甲斐がありましたね。

沼田城
柳川城ちゃん柳川城ちゃん、
この辺りには、どんな城娘ちゃんがいらっしゃるのです?

柳川城
そうですね、この辺りですと確か――

ガサッ、ガサガサッ……。

沼田城
あら……あちらから物音が……?

柳川城
噂をすれば影……ですね。

名島城
……およ?

名島城
あはっ、柳川城ちゃんだ!
こんにちはー♪

柳川城
名島城さん! お久しぶりです!
そういえばこの辺りは名島城さんの近所でしたね。

柳川城
殿、こちらは名島城さん。
筑前国の御城で、以前から良くしていただいている方なんです。

殿
…………。

名島城
はじめまして、名島城っていいまーす♪
あなたが噂の殿ちゃんね? ふーん……。

名島城
柳川城ちゃんからちょくちょく話は聞いてるけど……。
ちゃんとこの子のこと大事にしてあげてる? まさか、泣かせたりしてないよね?

殿
…………。

柳川城
名島城さん、急に何を……!
私は殿のお傍に居られるだけで、充分なんですから……!

柳川城
殿、今のは名島城さん流のご挨拶といいますか……。
とにかく、気になさらなくていいですから、ね?

殿
…………。

名島城
ごめんごめん、柳川城ちゃんがあたふたするなんて、
こういう時でもないと見れないからさ♪

名島城
まぁ、困ったことがあったら何でも言って!
九州はもちろん、日の本のどこへだって飛んでくよ♪

殿
…………!

名島城
で……そちらの方も城娘さんかな?

沼田城
はい! はじめまして、沼田城と申します♪

名島城
はじめましてー♪

名島城
沼田……ってことは、関東の子か。
上野国だっけ?

沼田城
その通りです! よくご存知で!

名島城
ほー、なかなか遠くからおいでになったんだねぇ……。

名島城
なんだか大所帯で楽しそう♪
私もご一緒しちゃおっかな~!

後半

名城番付 西軍上級の段

名島城との談笑で仲を深めつつ、沼田城は
自由に屋外を歩き回れることに喜びを感じていた。
しかし、そんな時間も長くは続かないのだった……。

前半
後半
沼田城

なるほど……名島城ちゃんの許には、
石田三成様が居城したことがあったのですね。

名島城
うん……まぁ、一時のことで、そんなに長くはなかったけどねー。

沼田城
石田三成様のことなら、私よく存じ上げております♪

沼田城
私の城主・真田昌幸様は、
三成様の指揮下で戦に臨んだこともあるんですよ!

名島城
うんうん、ちょこっとだけど、
三成様が真田家の話をしているのを聞いたことはあるよ~♪

名島城
距離は離れてるけど、意外なところで接点があったねぇ。

沼田城
ですね♪ 嬉しい偶然です!

沼田城
……あ、そうです。私のことも良いのですが、
もっともっと名島城ちゃんについて聞かせていただけませんか?

名島城
私のことについて?

沼田城
名島城ちゃんのことを、もっと深く知りたいのです♪
ご当地の名産品とか……御城の見どころなども!

やくも
(名産品……!)

名島城
うーん、名産品と言えば、海産物が有名かなぁ。

沼田城
海産物……お魚ですか!

名島城
うん! うちの近くは特に魚卵が有名なんだよ!
辛子明太子の味は絶品だから、ぜひ食べてほしいなー。

やくも
(じゅるり)

名島城
あとは、御城の見どころ……。
やっぱりうちの特徴と言えば、三方向を海に囲まれてるってことかな!

名島城
地上からの攻めづらさは勿論のこと、水軍もばっちり完備!

名島城
九州に異変が起きればすぐさま飛んでいけるように、
たくさんの船が待機する拠点にもなってたの!

沼田城
水軍の拠点……。
私、海とはまるで縁がないので、憧れてしまいます……!

名島城
ふふ、沼田城ちゃんの御城も、
海側の守りに不安があったら、いつでも力になるからね♪

名島城
(とかいって、実は私カナヅチなんだよね。
 ま、これは別に言わなくてもいいか、うん……)

沼田城
すごいです……城娘ちゃんとして魅力的なだけでなく、
御城としての強さも兼ね備えているのですね……!

沼田城
ふふ、お友達を作るために御城を出たら、
こんな城娘ちゃんと知り合うことができるなんて!

沼田城
自分の幸運に感謝しなければいけませんね♪

名島城
まぁ、嬉しいこと言ってくれるじゃない♪

名島城
素敵な出会いができたのは、お互い様だよ。

名島城
私も沼田城ちゃんと知り合えてよかった。
関東の方に行った時には、必ず立ち寄らせてもらうからね♪

沼田城
わ、嬉しいです! いっぱいおもてなししちゃいますよー♪

名島城
ふふ、楽しみだなー……って、あら?

名島城
ここは今、どの辺りだろ……?
沼田城ちゃんと話すのに夢中で、かなり歩いちゃったみたい。

名島城
ふふ、沼田城ちゃんがなんでもかんでも楽しそうに質問してくるから、
ついつい話しすぎちゃったよ。

沼田城
ですね、時が経つのがあっという間です♪

沼田城
いっそこのまま、
ぐるっと日の本を一周してしまうのも、悪くないですね~♪

???
させるものですか……はぁ、はぁ……。

???
何としても連れて、はぁ……帰、はぁ……。

沼田城
…………っ!?

沼田城
その声……まさか……?

名胡桃城
やっと見つけましたよ……沼田城様……!

名城番付 東軍初級の段

立ちはだかった名胡桃城は、沼田城の自由な
日々に終わりを告げる。しかし彼女は、求める
未来を掴むため、抗い続けることを選んだ……!

前半
名胡桃城

やっと見つけましたよ……沼田城様……!

名胡桃城
ぜぇ、ぜぇ……ぜぇ……。

やくも
名胡桃城……凄まじい形相だに……。

千狐
きっと、沼田城さんの姿を求めて、あちこち走り回っていたんですね……。

沼田城
な、名胡桃ちゃん……こんなところまで来るなんて……。

名胡桃城
はぁ、はぁ……。

沼田城
まぁ、汗でびっしょりではありませんか。
……じっとしてて? 私が拭ってあげますから。

名胡桃城
はぁ……沼田城、様……話を……。

沼田城
日頃から頑張りすぎなのですよ、あなたは。
もう少し肩の力を抜きなさいと常々申し上げているのに……。

名胡桃城
だ、誰のせいだと……。

沼田城
……え、何か言いました?

名胡桃城
誰のせいだと思ってるのですかー!!?

沼田城
きゃあっ!?

名胡桃城
見つかったから良かったものの!
一人で御城から抜け出すとは、なんて恐ろしいことを……!

名胡桃城
支城の皆も心配しています……さぁ、御城へ帰りましょう!

沼田城
……い、イヤです!

名胡桃城
沼田城様……。

沼田城
どうせ名胡桃ちゃんのことだから、
御城に戻ったら私を閉じ込めるつもりなんでしょう!

沼田城
そうに決まってます! きっと、鉄格子つきのお部屋とかに入れられるんです!

千狐
て、鉄格子……!?

沼田城
いいえ、それだけじゃないわ。名胡桃ちゃんからすれば、
私は脱獄者ですからね。手枷や足枷もつけられることでしょう……。

やくも
枷って……。
鎖の先に鉄球が付いてるアレだに……! 恐ろしいがや……!

名胡桃城
人聞きの悪いことを言わないでください!
そんなことしませんから!

沼田城
とにかく、名胡桃ちゃんの保護が厳しすぎるんです!

沼田城
御城の中の暮らしは、
退屈で、寂しくて……もう耐えられそうにありません!

名島城
…………。

名島城
なんだか穏やかじゃないねぇ……。

名島城
名胡桃城って言ったっけ?
あなた、少しばかり気を張りすぎなんじゃないの?

名胡桃城
きみは、いったい……?

名島城
私は名島城!
沼田城ちゃんとは今しがた友達になったばかりの間柄だよ♪

名胡桃城
友達……そうか、それはありがたい……。
今の沼田城様にとっては貴重な存在だ。

名島城
……そう思ってるなら、
多少の自由は許してあげてもいいんじゃないの?

名胡桃城
…………。

名胡桃城
名島城……きみの目には、沼田城様がどんな風に映った?

名島城
どんな風に?
うーん、難しいけど言い表すなら、そうねぇ……。

名島城
好奇心旺盛で、無邪気っていうか……、
疑いを知らない、子供……みたいな感じ?

名胡桃城
そう、きみの言う通り。
沼田城様はどんなことでも疑わず、受け入れてしまうんだ……。

名胡桃城
優しくて、無邪気で……汚れを知らない。

名島城
うん、いいことじゃない。

名胡桃城
あぁ、いいことだ……。
でも、だからこそ私は恐ろしいんだよ。

名胡桃城
良心につけ込んで食い物にしてやろうと目論む輩は、
此の世にはごまんといる……。

名胡桃城
もしそのような、邪な心を持った者に出くわせば……、
沼田城様は、簡単に騙されてしまうことだろう……。

沼田城
…………。

沼田城
(なにやら名胡桃ちゃんが話し始めましたが……)

沼田城
(もしかして、これは……好機なのでは……?)

名胡桃城
そして何より、私は……沼田城様に変わってほしくないんだ。

名胡桃城
奪われて、傷つけられて……、
誰かを疑うことを覚えた沼田城様なんて、見たくないんだよ……。

名島城
…………。

名島城
まぁ、気持ちは分からないでもない……ってか、
名胡桃ちゃんの言うことも、ごもっともだと思うよ。

名島城
けどさ、沼田城ちゃんだって一人の城娘なんだ。
意志や感情があるんだよ……。

名島城
押し込めた結果爆発しちゃうのは……、
仕方のないことだと思わない? むしろ普通の反応だよ。

名胡桃城
…………。

名島城
沼田城ちゃんがこれから先、ずーっと後ろを付いてきてくれる……、
そんな未来が実現するとは……あなただって思ってないよね?

名胡桃城
それは……。

名胡桃城
……それは、きみの言う通りだが……。

名島城
でしょ? あなただって、本当はちゃんと分かってるんじゃない。

名島城
主のことを思うあまり、視野が狭くなっちゃってるのよ。
冷静になって話し合えば分かり合えるって。ね?

名胡桃城
そうだな……確かにやりすぎだったかもしれない……。

名胡桃城
(私の目の届くところであれば……多少の自由を許しても……)

名胡桃城
沼田城さま……。
どうやら、頭を冷やすべきなのは私のようです。

名胡桃城
一度、腹を割って話を――

名胡桃城
――って。ん?

名胡桃城
ない……ない、ないぞ?
沼田城様の姿が、どこにもない!

名島城
あら、ほんと。いつの間に……?

千狐
先程までは、そちらに姿があったと思うのですが……。

名胡桃城
どこだ、どこへ行った……?

名胡桃城
…………。

名胡桃城
……こっちか! よし、東へ向かう!

柳川城
沼田城さんの居場所が分かるのですか?

名胡桃城
いや、勘だ……だが、脚を止めている暇など今の私には無いのだ!

名胡桃城
沼田城様、今行きますよ~!!

やくも
…………。

やくも
行ってしまっただに……。

やくも
殿さん、こうなったらうちらも後を追うしかないだに!

殿
…………?

やくも
このままだと、沼田城が大変な目に遭わされるがや!

やくも
手足に鉄球をくくり付けられて、
鉄格子付きの部屋に閉じ込められてしまうだに!

千狐
それは沼田城さんが少し大げさに言っただけでしょ……?

やくも
とにかく、何が起きるかわからんだに!
急いで名胡桃城の後を追わんといかんがやー!

千狐
こら、やくも……まずは殿のご判断を……!

千狐
……はぁ、行ってしまいました。
申し訳ありません殿……やくもが突っ走ってしまって……。

殿
…………。

柳川城
そうですね。殿の仰る通り、
ここであの二人を放って帰るわけにはいきません……。

千狐
はい……それに、千狐が沼田城さんを外に連れ出したことにも、
原因の一端はあります……。

千狐
とにかく、後を追うことにいたしましょう。
このままでは、やくもの背中まで見えなくなってしまいます!

殿
…………!

名島城
…………。

名島城
行っちゃった……。

名島城
私はこの辺で退散しとこっかな。
思うところはもう伝えたし。

名島城
沼田城ちゃん、また会えるといいな……今度手紙おくろーっと♪

後半

名城番付 東軍上級の段

逃走の甲斐なく、名胡桃城に捕まってしまった
沼田城。崩れ落ちた彼女の瞳からは悲しみの涙が
零れる。沼田城の未来に光はあるのか……?

前半
後半
名胡桃城

そこまでです!
……ようやく追い詰めましたよ。

沼田城
く……行き止まり、ですか……。

名胡桃城
はぁ、はぁ……観念してください……。

沼田城
捕まってしまいましたぁ……。

柳川城
逃走劇もここでおしまいですか……。

やくも
沼田城……。
出かけるのは初めてとかいう割に、相当体力あるがや……。

やくも
うちはもー、くたくたの極みだに……。

殿
…………。

沼田城
あぁ、おしまいだわ……全ておしまい……。

沼田城
さようなら、みなさん……。
今までお世話になりました。

沼田城
きっともう、お会いすることもないでしょう……。

名胡桃城
また大げさなことを言って……泣くことないでしょう……。

沼田城
あります……大号泣です……。

沼田城
だって、だって……この旅を最後に私は、
光無き世界で生涯を終えるんですからぁ……。

沼田城
うぅ……ううえぇぇぇ~~……。

名胡桃城
…………。

名胡桃城
多少の寄り道であれば、私は構いませんが……。

沼田城
ふぇ……?

名胡桃城
だから……寄り道ですよ。
せっかく御城を出たんですから、まっすぐ帰るのも面白くないでしょう?

名胡桃城
沼田城様のことは、私が責任をもって御城にお連れします。
ですから……多少道を逸れるくらいなら、問題にはならない、はずです……。

沼田城
…………なんと!

沼田城
それは本当ですか、名胡桃ちゃん!?

名胡桃城
……名島城さんと話して、
私も省みるべきところがあると考えたのです。

名胡桃城
沼田城様に無理を強いていたことは、以前より感じていましたから……。

沼田城
…………!

名胡桃城
って沼田城様?
私の話を聞いていますか? 沼――

沼田城
やったぁぁあ! 名胡桃ちゃん大好きー♪

名胡桃城
きゃっ!?
沼田城様、そんなに寄りかかられると危ないですっ!

柳川城
良かったですね、沼田城さん。

沼田城
えぇ! 私、
まだまだ行きたいところが数え切れないほどあるんです♪

千狐
もちろん、千狐がお力添えいたしますよ♪

千狐
まだ余力はありますから、
沼田城さんの要望に応えて、連れて行ってさしあげましょう♪

名胡桃城
かたじけない……力も限りあるものだというのに。
殿にもお付き合いいただくことになってしまって……。

殿
…………!

やくも
殿さんの言う通りだに!
うちらも旅行を楽しめるから、お互い様だに!

やくも
それに、こういうことでもなければ、
けちんぼの千狐は転移なんてしてくれないがや!

千狐
誰がけちんぼよ。
やくもがいっつも、食べ物を目当てに転移をねだるからでしょう?

千狐
それで……沼田城さん、どこか行きたいところはありますか?

沼田城
…………。

沼田城
……そのぅ、
海の向こうへ、という希望も聞いていただけるのでしょうか……?

千狐
海の向こう……異国ですか。
どこか興味のある国でも?

沼田城
そうなんです。
お手紙を送った中で、気になる名前を見つけて……。

名胡桃城
(……手紙?)

沼田城
確か、ヨーロッパの方の……。
れ、れぇべ……なんて言いましたっけ、柳川城ちゃん?

柳川城
レーヴェンブルク城さんですね。ドイツの城娘です。

沼田城
そうそう、その子です♪

沼田城
聞けば、レーヴェンは現地の言葉で『獅子』を示すというではありませんか♪

沼田城
私のかつての城主・真田信之様は、
『信濃の獅子』の異名で知られた猛将……。

沼田城
同じく獅子の名を冠するレーヴェンブルク城に、
ぜひお会いしてみたい、と思った次第です。

千狐
柳川城さん、レーヴェンブルク城さんにもお手紙を送ったのですね。

柳川城
えぇ、『知っている限り教えて』と沼田城さんから強く求められてしまって……。

柳川城
ふふっ。あの顔を見ているとなぜか、
沼田城さんの力になりたいと思ってしまうんですよね。

名胡桃城
そう、それこそが沼田城様の真の恐ろしさ……。
あの方の愛くるしい笑顔には、誰も逆らえないのだ……。

千狐
……それでは、準備が整い次第、
レーヴェンブルク城さんの許へ向けて、出立いたしましょう!

名城番付 海外初級の段

『獅子』の名を冠する異国の御城……その存在に
惹かれてドイツへ飛んだ沼田城だが、彼女を迎え
たのは、愛くるしい容姿の幼い城娘だった……。

前半
千狐

転移成功ですっ!
ドイツに到着しましたよ、沼田城さん!

沼田城
これが異国……日の本の外に広がる世界……!

やくも
向こうに見える大きな建物……、
あれがレーヴェンブルク城だに?

千狐
そうね……しばらく歩けば、すぐに――

レーヴェンブルク城
…………あら?

レーヴェンブルク城
そこにいらっしゃるのは……王様ではありませんか?

殿
…………!

レーヴェンブルク城
あら、本当に王様がいらっしゃいます!
またお会いできるなんて嬉しいですわ♪ 今回はどのようなご用向で?

やくも
用ってほどのことはないがや! ただの観光旅行だに♪

レーヴェンブルク城
観光旅行、ですか?

沼田城
はい……今回は、
私のわがままを聞いていただく形で、こちらへ……。

沼田城
それで……あなたがレーヴェンブルク城さん、なのですね……?

レーヴェンブルク城
はい、そうですが……あなたは……?

沼田城
…………。

沼田城
(獅子……この可愛らしい子が、獅子……?)

沼田城
(いえ、外見だけを見てあなどってはいけないわ……。
 きっと、心の中には獅子に通づる強さを……)

沼田城
(……あら、よく見ると肩にちっちゃな獅子が乗ってますね?)

沼田城
(可愛い……撫で撫でしてあげたいですねぇ……ふふっ♪)

レーヴェンブルク城
(なんでしょう……。
 にんまり笑ってこちらを見つめていますが……?)

レーヴェンブルク城
あの、その……?

名胡桃城
沼田城様、沼田城様……まずはご挨拶を。

沼田城
はっ、そうでした。これは失礼を。

沼田城
はじめまして、日の本は上野国からまいりました、沼田城と申します。
どうぞ、お見知りおきを♪

レーヴェンブルク城
はい、はじめまして♪
……って沼田城さん、と申し上げました?

レーヴェンブルク城
どこかで聞いた名だと思ったら……もしかして、
先日届いたあのお手紙の差し出し人さんかしら?

沼田城
そうですそうです!
光栄です、覚えててくださるなんて♪

レーヴェンブルク城
観光旅行と聞きましたが……、
わたくしの御城を目的に?

沼田城
そうなんです。獅子の名を冠する、
レーヴェンブルクちゃんの御城を拝見したいと思いまして……。

レーヴェンブルク城
えぇ、構いませんわ。今はちょうど――。

エゲル城
どうしたのレーヴェンブルクちゃん。
新しいお客さん?

レーヴェンブルク城
あら、ちょうどいいところに。

レーヴェンブルク城
エゲル城さん、こちら日の本の王様です。
以前、わたくしの危機に駆けつけてくださったという話……覚えてます?

エゲル城
もちろん覚えてるよ♪
はじめまして王さま。お目にかかれて光栄だわ♪

エゲル城
あたしの名はエゲル城。
お気に入りの鞭で、王さまの敵はみんなやっつけてあげるからね♪

殿
…………!

レーヴェンブルク城
今日はエゲル城さんが、
ハンガリーの美味しいワインを届けてくれたんです。

エゲル城
そうなの♪ ドイツには、酒ら――

エゲル城
――ワイン好きの城娘がいるから、時々飲み比べをやってるんだ~。
今日もここに集まって、みんなでワインを堪能してたってわけ♪

やくも
(酒乱……今、酒乱って言いかけてただに……!)

レーヴェンブルク城
ハイデルベルク城さんと、
コッヘム・ライヒスブルク城さんのことですわ。

やくも
はいでる……こっへ、らいす……。

千狐
ライヒスブルクよ、やくも。らいすはお米……。

名胡桃城
飲み比べですか……しかし、そのハイデルベルク城さんと、
コッヘム・ライヒスブルク城さんの姿が見えませんが……?

沼田城
お会いできるなら、ぜひご挨拶したいですね♪

レーヴェンブルク城
あー、それがですね……今はちょうど逃走劇の只中にありまして……。

千狐
と、逃走劇?

レーヴェンブルク城
もっと主として相応しい振る舞いを――そう言って、
ハイデルベルク城さんを叱りつける子がいるんです。

エゲル城
プファルツ城ちゃんっていうの。
ちっちゃくて、すっごく可愛いの。ずーっと膝に乗せておきたいくらい♪

レーヴェンブルク城
そう……ちっちゃくて、すっごく可愛いんですけど、
とっても規律に厳しいんですの。

エゲル城
二人……特にハイデルベルク城ちゃんは、日頃から追い回されてるんだよねぇ。
逃げては飲み、飲んでは逃げて……。

エゲル城
それで、最後は泥酔状態で捕まるっていう……。

レーヴェンブルク城
……ですから、ここに居ないということは、
また逃げるなり隠れるなりしているということなのでしょう……。

沼田城
支城から逃げ回る主、ですか……。

沼田城
何だか親近感が湧いてしまいますね、ふふっ♪

名胡桃城
私はそのプファルツ城という城娘に同情してしまいます……。

レーヴェンブルク城
まぁ、ハイデルベルク城さんたちの紹介は、またの機会に。
いつ戻ってくるかもわかりませんから……。

沼田城
そうですか……。

レーヴェンブルク城
くす……そんなに悲しそうな顔をしないで?

レーヴェンブルク城
代わりといってはなんですが、
わたくしの御城をご案内してさしあげますわ♪

レーヴェンブルク城
わたくしに興味を持って、
この地まで来てくださったのでしょう?

沼田城
まぁ、よろしいのですか!
ぜひともお願いしたいです♪

――――。

レーヴェンブルク城
こちらがわたくしの御城になります。

沼田城
おぉ~♪

千狐
御城全体に傷がたくさん……。
この外観は、なんというかその……。

やくも
前にも思ったけど改めて見ると、
やっぱりボロっち――もごぁっ!?

千狐
あらやくもー? 唇に羽虫がとまっていたわよ?
ちょっとじっとしててちょうだいねー?

やくも
もがもがっ!?

千狐
(だめでしょやくも……!
 こういう場合は趣深いとかそういう表現を……)

レーヴェンブルク城
勘違いされたままですと悲しいので、
説明させてもらいますが、この外観は……。

沼田城
これって、もしかして……。

沼田城
傷や劣化の跡……築城の際に、
意図して付けられたもののように見えますが……違いますか?

レーヴェンブルク城
…………。

レーヴェンブルク城
……その通りです。わたくしを築城する際に、
中世の雰囲気を再現することが目的の一つとして挙げられました。

レーヴェンブルク城
ですから……わたくしという御城は、
生まれながらにして、このような……多数の傷を負った外観をしているのです。

レーヴェンブルク城
貴方……このことを知っていたのですか?

沼田城
いいえ……。
ただ、これらの傷からは、意図的なものが感じられましたから。

沼田城
年を経たり、誰かに襲われたりすることで、
自然とこの形に至るとは、とても思えませんでした。

沼田城
その傷も、壊れたあの壁も……『御城の美しさが引き立つように』と、
築城した方が頭を悩ませて、できあがったものなのでしょうね。

沼田城
趣向を凝らした、独自の装飾……素晴らしいです♪

レーヴェンブルク城
…………。

レーヴェンブルク城
沼田城さん……素晴らしいのは貴方の方ですわ。

レーヴェンブルク城
我が城最大の魅力を真っ先に見抜くとは……貴方、素晴らしすぎます!

レーヴェンブルク城
付いて来てください!
隅から隅まで案内して差し上げましょう! さ、早く!

エゲル城
レーヴェンブルクちゃん、嬉しそう♪

名胡桃城
沼田城様は、芸術に関する素養も備えておいでなのだ……。
彼女の言う通りだ……あぁ、沼田城様は本当に素晴らしい……!

数刻後――――。

レーヴェンブルク城
……とまぁ。わたくしの御城で話すべきところは、このくらいでしょうか。

沼田城
あら、もう一周回ってしまったのですね……。

沼田城
興味深いお話がたくさん聞けて、とっても楽しかったです♪

エゲル城
沼田城ちゃん、ずーっと目をキラキラ輝かせてたもんねぇ。

沼田城
目に映るもの全てが新鮮で、輝いて見えるんです!

沼田城
いつか、エゲル城さんの御城にも、伺ってみたいものです♪

エゲル城
おいでおいで♪ いつでも歓迎だよぉ。

エゲル城
沼田城ちゃんには特別に、
あたしのアイアンメイデンも見せてあげる。

沼田城
あいあん、めいでん……?

エゲル城
『鉄の乙女』って意味なんだけどね、
毎日休まず磨いてあげたお陰で、ピッカピカに光ってるんだよ~。

沼田城
『鉄の乙女』……なんだか勇ましいお名前ですね……!
どのようなものなのか想像がつきませんが、ピカピカに光っているとは……?

エゲル城
まぁ、あたしのコレクションの話は、
今度うちに来た時にでも、ゆっくりしましょ。

レーヴェンブルク城
(拷問器具だってこと、先に言っておいた方が良いんじゃないでしょうか……)

エゲル城
……それで沼田城ちゃん、観光旅行って話だったけど、
ドイツを出た後も他の国を回る予定なの?

やくも
だに。美味いものがあるなら、うちはどこにだって行くがや。

千狐
連れて行くのは千狐なのだけど……。
というか、やくもの食い倒れ旅行ではないのだけど……。

千狐
……どうですか、沼田城さん?
他に行ってみたい国などはありますか?

沼田城
他に行ってみたい国、ですか。
そう尋ねられると、んー……中国なども気になりますが……。

千狐
中国ですか……?

沼田城
はい。真田家の家紋は、私にとって思い入れのあるものですが……。
どこで聞いたのだったか、その由来が中国にあると伺ったことがあるのです。

沼田城
叶うなら、現地の城娘ちゃんから話を伺って、
その答えを知りたい、と思いまして……。

やくも
それじゃ、ドイツ観光が終わったら、次は中国に向かうだに!

やくも
きっと中国でも、
日の本じゃ食えない美味い料理と、えっぱい出会えるに違いないがや!

千狐
だから、やくものご飯が目的じゃないんだってば、もー!

殿
…………!

後半

名城番付 海外上級の段

中国に転移した一行が、辺りを散策の始めようと
したその時、砂埃を巻き上げながら猛然と
駆け込んでくる、一人の城娘の姿が……!

前半
後半
千狐

到着しました!転移成功です!

沼田城
おぉ……これが中国ですか……!

沼田城
建物も、植物も、漂う空気まで!
ドイツとは似ても似つかない! すごい、すごいですー!

千狐
ふぅ……沼田城さんは疲れ知らずですね……。

名胡桃城
誠に痛み入る……千狐さんの方は大丈夫か?
転移によって力も消耗しているかと思うが……。

千狐
心遣いありがとうございます。
まだまだ元気ですから、心配は要りませんわ。

千狐
……とはいえ、緊急時のことを考えると、
力は余分に残しておきたいところです。

千狐
ここで一通り楽しんだ後は、
次は所領に戻れると……ありがたいですね。

名胡桃城
承知した。沼田城様にも、そのように伝えよう。
もう充分に楽しんだし、ご理解いただけることだろう……。

沼田城
名胡桃ちゃん、何ぼーっとしてるのー! 名胡桃ちゃんもおいでー!

名胡桃城
千狐さんの言う通りだ……。
御城を出てからというもの、活発さには拍車が掛かる一方で……。

名胡桃城
本当にあなたは……困った方だ……。

???
困った、じゃと!?

名胡桃城
……ん?

???
誰か、困ったと言ったな!? うむ、聞いたぞ!
今、我の耳は確かに困窮する迷い人の声を聞いた!

名胡桃城
……? 今の声は、いったい……?

沼田城
名胡桃ちゃん、名胡桃ちゃん!

沼田城
大変ですっ!
あそこを見てください! あそこ!

名胡桃城
……ん、どうされたのですか?

沼田城
すんごい砂埃!
しかも、なんだか近づいてきてる気がします~!

柳川城
いえ、気のせいではなく、確かに近づいてます。
まっすぐに、猛然とこちらへ……。

???
うおおおぉぉぉぉおぉ……!

不夜城
とうちゃあぁぁぁく!

不夜城
陰った心に差し込む、日輪の輝き!

不夜城
我の目の届くところでは、夜も曇りも許されない!

不夜城
弱きを助く皆の味方、不夜城! 参上だああぁぁぁ!

不夜城
(ふっ、決まった……!)

沼田城
つ、土埃の中から可愛らしい女の子が……!

不夜城
……む?

不夜城
身にまといしその力……もしやそなたら、城娘か?

沼田城
はい! 沼田城と申します♪
観光をしようと先程到着したところです!

不夜城
その名……日の本の者だな。
するとつまり……そこに居る御仁は、噂に名高き日の本の王か?

殿
…………!

不夜城
おぉ、これはなんという奇遇か!

不夜城
我の名は不夜城!
長きに渡ってこの国を見守ってきた、古の城娘だ!

不夜城
王よ! そなたに会えたこと、心より嬉しく思う!
明るい陽の照らす世の中を取り戻すため、共に戦おうぞ!

殿
…………!

不夜城
……しかし、誰かが困っていると思って来てみれば、
日の本の城娘たちだったとは。こんなところで会うとは、思ってもみなかったぞ。

名胡桃城
不夜城さんは、
先程の私の呟きを聞いて、ここまでやってきたのか?

不夜城
うむ。困った者は放っておけない性分なのでな♪

不夜城
もちろん、そなたたちも例外ではない!
沼田城が観光を楽しめるよう、我も力になるぞ!

沼田城
ありがとうございますー♪ 

沼田城
では、さっそくで恐縮ですが、
一つ知恵をお借りしたいことが……。

不夜城
話してみるが良い! 我がたちどころに解決へと導いてやろう!

沼田城
実は、私の城主・真田家の家紋が、
中国に起源を持つと聞いたことがありまして……。

不夜城
ほぅ、真田といえば日の本の名家……そこの家紋とな。

沼田城
こちらになるのですが……、
この紋に何か、心当たりはありませんか?

不夜城
ふむ、銭が六つ……六文銭の紋か。

不夜城
なるほど、これは冥銭だな。
我が国の風習が日の本に伝わったという話を以前、聞いたことがある……。

沼田城
冥銭、ですか?

不夜城
一種の副葬品だ。
三途の川を渡るお代として、死者と共に銭を葬る風習があるのだ。

沼田城
…………。

沼田城
……不惜身命。

不夜城
……ん? なんだ、その言葉は?

沼田城
真田家が自らの生き様として唱えた、覚悟の証です。

沼田城
宿りし意味は、『身も命も惜しまず戦う決意』……。
その言葉と共に、真田家はこの家紋を掲げました。

沼田城
死者と共に葬られる、六文銭の紋を……。

名胡桃城
…………。

沼田城
……ありがとうございます、不夜城ちゃん。
謎が解けてすっきりしました♪

沼田城
それにしても、不夜城ちゃんは物知りなのですね。
先程は私の名前を聞いて日の本だと感づいたようでしたし……。

不夜城
当然! 先程申した通り、我は古の城娘!
その歴史は春秋の時代まで遡れるのだ!

沼田城
春秋……?
それはいったいどのくらい前の……?

千狐
春秋というと、えーっと……。

やくも
よーわからんけど、
つまりは、とんでもなく古~い歴史を持つ城娘ってことがや!

沼田城
なんと……そうだったのですね……! 

沼田城
そんな御方を相手に『不夜城ちゃん』などと気安い呼び方をしてしまうなんて……。
申し訳有りませんでした、不夜城様……。

不夜城
良い、良い!
たまたま先に生まれただけのこと、敬われるようなことなど何もしとらん!

不夜城
じゃからそなたらは、気にせず『不夜城ちゃん』と呼んでくれ!
気安く接してくれる方が、我も嬉しい♪

沼田城
わ、わかりました……それでは遠慮なく、
不夜城ちゃん、と……。

不夜城
ふふ、この歳になって、
新たな友人ができるとはな……。

不夜城
皆、我の御城にぜひ寄っていってくれ!
今日は良い日だ♪ 我にできる最高のもてなしでこの出会いを祝うぞ!

殿
…………!

不夜城
それに沼田城、そなたは中国に興味があるのだろ?
御城に着いたら、腰を落ち着けて話をしようじゃないか。

不夜城
この国の移り変わりと生涯を共にしてきたこの我が、
そなたの聞くべき問が枯れて果てるまで、付き合ってやることにしよう!

沼田城
まぁ、本当ですか♪
夜通し付き合ってもらうことになりますよ?

不夜城
ほう、この我を相手に挑戦状か……?
よかろう! 受けてたってやる!

名胡桃城
…………。

名胡桃城
沼田城様、楽しそうなお顔……。

名胡桃城
(御城にこもっている頃は、あのような笑顔は見せなかった……)

名胡桃城
(……いや、違う。御城にこもることで、変わられてしまったんだ。
 無邪気で天真爛漫な心を、失ってしまったんだ……)

名胡桃城
(私は自分の身勝手で、沼田城様にご迷惑を掛けているのかもしれない……)

不夜城
……して、沼田城よ。
この国にはどのくらい滞在する予定なのだ?

不夜城
私の御城で良かったら好きなだけ居座っていいぞ!
ここ最近は退屈な日が続いててな……話し相手が欲しかったのだ♪

沼田城
はい喜んで、と言いたいところですが……、
あまり長居はしていられません。

沼田城
私たちの本分は、日の本を守ること……。
それに、千狐ちゃんの聖なる力にも限りがありますから。

千狐
沼田城さん……。
先程の会話、聞いていたのですね。

沼田城
千狐ちゃんも殿も……他の皆様も、
私に良くしてくれますが、甘えてばかりはいられません。

沼田城
最後は、結局……、
名胡桃ちゃんと一緒に御城へ帰らなければならないのですから。

名胡桃城
…………。

不夜城
そうか……長居はできんか……。
悲しいことだが、仕方ないな……。

殿
…………。

殿
…………!

千狐
そうですね……それでは、あと一泊だけ……。

千狐
沼田城さんの仰る通り、旅行もしっかり楽しんだことですし、
あと一泊だけ楽しんだら、所領に戻ることにいたしましょう♪

不夜城
よぉし、ではこの一晩、
悔いなきように全力でもてなすぞっ!

沼田城
……今晩が最後の夜ですか。
目一杯楽しみましょうね、名胡桃ちゃん。

名胡桃城
…………。

沼田城
……名胡桃ちゃん?
どうかしました? 調子でも悪い?

名胡桃城
あ、いえ……そんなことは。
すみません、少しぼーっとしてしまって……。

沼田城
ごめんね……名胡桃ちゃんも疲れちゃいましたよね。

沼田城
ですがこれが終われば、
また御城での生活に戻ることになります……。

沼田城
だからお願い。
もう一晩だけ、付き合ってちょうだいね……。

名胡桃城
これが終われば、また御城に……。

沼田城
……? そうでしょう?
私、何かおかしなこと言ったかしら……?

名胡桃城
いえ、そんなことは……。

沼田城
ふふ、やっぱり疲れが溜まっているのかしら?

沼田城
不夜城ちゃんの御城に着いたら休めるはずだから、
あと少しだけがんばりましょう、ね?

名胡桃城
…………。

名胡桃城
はい、そうですね……。

名城番付 決戦初級の段

所領に到着した一行だが、依然名胡桃城は元気を
失ったままだった。沼田城はそんな彼女に
歩み寄り、その心中を窺おうとするが……。

前半
千狐

転移成功です!
皆さん、所領に到着しましたよ♪

やくも
所領だにー!
なんだか随分久しぶりな気がするがや。

沼田城
ええ……本当に。
この短い間に、様々な出来事がありました。

沼田城
ですが到着……となると、
皆様とはもうお別れになりますね……。

沼田城
自分の御城に戻ってからも、
この思い出を胸に、名胡桃ちゃんと――

名胡桃城
…………。

沼田城
名胡桃ちゃん……?
元気がないみたいだけど、やっぱり……?

名胡桃城
あ、いえ。そんなことは……。

沼田城
さっきから歯切れの悪い返事ばかり……名胡桃ちゃんらしくありませんね。

沼田城
何か……私に伝えたいことがあるのではないの?

名胡桃城
…………!

沼田城
あなたがそうやって難しい顔をする時は、
大抵……私について思い悩んでいると決まっています。

沼田城
これが只のうぬぼれだったら、私は安心できるのですが……。

名胡桃城
…………。

名胡桃城
仰る通り……私は先程から沼田城様について、
考えを巡らせておりました。

名胡桃城
ですが今、この胸の内にある考えを口にしたら……。
沼田城様は失望されるかもしれません。

沼田城
……それは大事ね。

名胡桃城
そうですね……大事です。

沼田城
ですが……聞かないことには始まりませんね。
聞かせてもらえるかしら?

名胡桃城
…………。

名胡桃城
この旅の中で、
私は……多くのことを知りました。

名胡桃城
私が見たことのない、または忘れかけていた……、
沼田城様の一面を目の当たりにしたのです。

名胡桃城
そこで私は考えるようになったのです。
沼田城様にとって、私は必要ないのかも……と。

沼田城
…………。

沼田城
……どうして、そんなことを?

名胡桃城
笑顔です。
久しく見ていなかった……沼田城様が、無邪気に笑うお顔……。

沼田城
私の笑顔……?

名胡桃城
『沼田城様は、私が居なければいけないのだから』
……私はずっとそう考えてきましたが、そうではなかった。

名胡桃城
実際は、私がそう思いたかっただけ……。
ただ、甘えていただけなんです。

名胡桃城
事実、私の許から逃れた沼田城様は、
所領まで無事に辿り着いています……。

名胡桃城
そして御城にこもっていた頃よりもずっと自由に、
楽しげに振る舞っておられる……。

沼田城
…………。

沼田城
ではあなたは……私を護衛する立場から、
降りる……そう言いたいのですか?

名胡桃城
…………。

沼田城
……顔を上げて、名胡桃ちゃん。

沼田城
今、あなたが考えてることを……私の顔を見て、言ってみて?

名胡桃城
…………。

名胡桃城
私は……私は…………。

名胡桃城
申し訳ありません。
今はまだ気持ちの整理がつかなくて……。

名胡桃城
私、少し席を外しますね……すみません。

沼田城
名胡桃ちゃん、ちょっと……!

沼田城
…………。

柳川城
行ってしまいました……。

やくも
名胡桃城も色々複雑な事情があったんだに……。

柳川城
沼田城さん……大丈夫ですか?

沼田城
……不覚でした。

沼田城
長い時を共に過ごして、
知らないところなどとうに無くなった……と思っていましたが。

千狐
沼田城さん……。

沼田城
心配は要りません。帰って、
名胡桃ちゃんの心が落ち着いたら……もう一度、じっくり話してみます。

沼田城
……感謝いたします。
私と名胡桃ちゃんの会話を黙って見守ってくれていたこと……。

殿
…………。

沼田城
さて。そろそろお暇いたしましょうか。
笑顔でお別れ……とはならなかったのが少し残念ですが。

沼田城
今度機会がありましたらぜひ、
私の御城でお礼の宴でも催したいところです♪

やくも
いいだに! 今度と言わず、今すぐ行くだに!

千狐
い、今すぐ?

やくも
『お礼は今度』って……これまで何度聞いたかわからんがや。
……いつも、同じようなことを言いつつ、なかなか実現しないんだに……。

千狐
それはそうかもしれないけど……。

やくも
千狐は行きたくないんだに?

千狐
もちろん、行けたら嬉しいけど……。

千狐
でも、ほら……。
名胡桃城さんと沼田城さんは、落ち着いて話をしたいでしょうし……。

沼田城
…………。

やくも
だにぃ……くよくよ悩むくらいなら、
宴で吹っ飛ばすのがいいかと思ったんやけど……。

やくも
それに、『沼田城様は素敵な御城だ』
って名胡桃城が言ってたから……一度見てみたかっただに……。

沼田城
…………!

柳川城
今回は込み入った事情もあるようですし、
残念ですが沼田城さんの御城に伺うのは、機会を改めてということに……。

沼田城
いえ、待ってください。

沼田城
考えてみたら、
やくもさんの言うこと……一理あるかもしれません……。

やくも
おぉ!?

やくも
やっぱり宴で吹っ飛ばすだに!?
それなら、盛り上げ役はうちが買ってでるがや!

沼田城
いえ、吹っ飛ばすというのは良くわかりませんでしたが……。
ただ、皆様の力をお借りすることで、あるいは、と。

千狐
千狐たちの力?
それはいったい、どういう……?

沼田城
…………。

沼田城
名胡桃ちゃんのことですから……、
私が『傍に居て』と頼めば、それに従ってくれるでしょう。

沼田城
先程口にした苦悩を抱えたまま……。
これまで通りに振る舞おうとするでしょう。

沼田城
ですが、それでは解決になりません。

沼田城
私は名胡桃ちゃんに……、
これまでしてきたことが間違っていなかったのだと、分かっていただきたいのです。

沼田城
それを伝えるには……皆様の言葉の方が適しているのではと、考えた次第です。

千狐
話がまだ見えませんが……千狐たちは何をすれば良いのです?

沼田城
特別なことをする必要はありません。
皆様には……私の御城を見ていただきたいのです。

沼田城
そして、その時思ったことを、そのまま口にしていただければ……。
きっとそれが、名胡桃ちゃんの心に届く……私はそう思います。

やくも
沼田城と名胡桃城が仲直りする手伝いが、
うちらにできるってことがや?

沼田城
ええ……御屋形様たちには、
ご足労いただくことにはなってしまいますが……。

殿
…………!

やくも
殿さんの言う通りだに! そんなの苦労の内に入らんがや!

柳川城
沼田城さんの御城を見て、
率直な感想を……本当にそれだけで良いのですか?

沼田城
そうです。その瞬間に過ぎた思いを、
そのまま言葉にしていただくことに、意味があるのです。

やくも
なら簡単だに!
頭に浮かんだ言葉をそのまま、ずばーっと放ってやるがや!

千狐
やくも……。
途轍もなく不安なのだけど……。

殿
…………。

沼田城
御屋形様も、ありがとうございます……。
では準備が整ったら、我が城に向けて出立いたしましょう。

やくも
……それじゃうちは、名胡桃城に声を掛けてくるがやー!

沼田城
…………。

沼田城
(……大丈夫。上手くいくはずです)

沼田城
(名胡桃ちゃんが守ってくれた私の『日常』……その尊さが、きっと……)

後半

名城番付 決戦上級の段

目的地に到着した一行。すると沼田城は
名胡桃城に向き直り、今回の旅の中で得た
気付きと、彼女への思いを語り始める……。

前半
後半
沼田城

到着しましたよ、皆さん!
こちらが我が城、沼田城です♪

やくも
おぉー! 見事な御城だに!

柳川城
五層の天守に、複数の櫓……。
規模の大きさもかなりの物です……!

殿
…………!

千狐
そうですね! 兜の蔓延る此世において、
これだけの状態を保っているというのも、また驚きです!

沼田城
この御城は……私の誇りなんです。

沼田城
私が城娘として顕現するよりも前から、ここで……、
名胡桃ちゃんを始めとする支城たちが、兜の侵攻を退け続けていました。

沼田城
支城たちの忠義と奮戦の証……それがこの、沼田城なんです。

千狐
では、千狐たちに『御城を見てもらいたい』と仰ったのは……。

沼田城
そうです。支城たちが守ったものを、
皆様に見ていただきたかった……。

沼田城
先程、御屋形様が仰った通り……この乱世において、
私の御城が今日まで存続しているのは、当たり前なんかじゃない。そう思ったから……。

沼田城
兜の存在は未だに各地で民を脅かしていて……、
城娘にとっても、予断を許さない状況が続いています。

沼田城
私は、自分が享受していた『平穏』に、もっと感謝するべきだったんです。

沼田城
御城から出て、外を回ることで……それに気づきました。

名胡桃城
…………。

沼田城
ねぇ、名胡桃ちゃん。

沼田城
あなたのしてきたことは、間違ってなんかいないのですよ。

名胡桃城
沼田城様……。

沼田城
ここに着くまでの間、私……ずっと考えていました。

沼田城
自分の気持ちを、名胡桃ちゃんにどう伝えるべきか、と……。

沼田城
これから先のことを話そうとも思いました。でも……、

沼田城
何より先に……これまであなたが尽くしてくれたことへ、
感謝を伝えるべきだと考えました。

沼田城
だって、そうでしょう……。

沼田城
私のために誰より尽くしてくれたあなたが、
自分の行いを『間違いだった』なんて。

沼田城
そんな悲しいこと、あっていいわけないじゃないですか……。

名胡桃城
…………。

沼田城
私から命じることはありません。
これから先のことは、あなたが好きに決めていいです。

沼田城
……でも、これだけは言わせてください。

沼田城
私の我儘に困った顔を浮かべるのも、
脱走した私を追いかけてくるのも、
楽しいことがあった時に一緒に笑い転げるのも……。

沼田城
名胡桃ちゃんだったら嬉しいな、
と……私はそう思っています。

名胡桃城
…………。

名胡桃城
沼田城様に励まされる時がくるなんて……。
思いもしませんでした。

沼田城
あら、失礼ね……私だって主として、
ちゃんと従者のことを見てるんですよ?

名胡桃城
そのようですね。
対する私は、自分のことしか見えていなかった……。

沼田城
…………。

名胡桃城
でも確かに……沼田城様の仰る通りです。

名胡桃城
私が、あなたの傍を離れるわけにはいきませんよね。
こんな役目が他の城娘に勤まるとは思えませんし……。

沼田城
名胡桃ちゃん以外には耐えられない……そう言いたいのかしら?

名胡桃城
いえ、そうではありません……。

名胡桃城
あなたのことを一番想っているのは私だと……その自負があるからです。

沼田城
…………!

名胡桃城
それに……どうせ離れたら離れたで、私は……、
沼田城様のことが心配になって、何も手がつかなくなるに決まっています……。

名胡桃城
だから私はこれからもあなたのお傍で、
この身を尽くしていきたいと……願います。よろしいでしょうか……?

沼田城
名胡桃ちゃん……!

沼田城
もちろんです!
これから先も私を支えてくださいね!

名胡桃城
……すみません。ご迷惑を掛けてしまって。

沼田城
迷惑なんてとんでもない!
改めてよろしくね、名胡桃ちゃん!

やくも
仲直りできて良かったがや! 二人とも♪

沼田城
皆様のお陰です♪
本当に、何から何までお世話になってしまって……。
いくら感謝してもしきれないです!

沼田城
今晩はおもてなししますから、ゆっくり楽しんでいってくださいね♪

やくも
やっただに~!

名胡桃城
そうでした……殿たちにこの度の礼を伝えるため、
宴を催すのでしたね……。

名胡桃城
こうしてはいられません……準備を整えなければ……!

沼田城
名胡桃ちゃんは休んでいても良いのですよ?
疲れも溜まっているでしょうし……。

名胡桃城
ご心配には及びません。
もちろん疲れはありますが……今は働きたい気分なんです!

名胡桃城
私、支城たちに声を掛けてきます!
沼田城様のお帰りを待ちわびているでしょうから!

沼田城
あっ、名胡桃ちゃん……!

沼田城
行ってしまいました……元気を取り戻したのはいいけど、
また頑張りすぎてしまわないか心配です……。

やくも
うたげ、うたげ♪ 宴だに~♪

やくも
なんか今回は結構役に立った気がするし!
えっぱいもてなしてもらって、思う存分楽しむがや!

名胡桃城
……沼田城様~~~~!

やくも
……ん?

名胡桃城
沼田城様あぁ~~~~! ご説明を~!

やくも
なんだに?
名胡桃城が物凄い勢いで戻ってくるがや……?

沼田城
どうしたのかしら……。
支城たちに声を掛けるにしても、戻りが早すぎる気がしますが……。

沼田城
それになんだか……慌てているようにも見えますが……?

千狐
いえ、あれは慌てているというよりも、
怒っているような……。

名胡桃城
説明してください、沼田城様!

沼田城
……え?

名胡桃城
なんなのですか、あの手紙の山は!
御城が埋まりそうな勢いですよ!?

沼田城
……手紙? 手紙とはいったい……?

千狐
…………あー。

千狐
もしかして……先日、
所領から送った手紙のお返事が届いたのでは……?

やくも
あぁ……元はと言えば、
返事が届くまでの暇を潰すために、出かけたんだったがや。

柳川城
バタバタしている内に忘れていましたね……。

沼田城
確かに……私もすっかり忘れていました……。

沼田城
あれ……でも、手紙のお返事は所領に届くはずでは……?

名胡桃城
こちらに書き付けが添えられていましたよ。
ツバサさん、という方から……読み上げますね。

ツバサ
こんな沢山の手紙、
どうやって保管しろって言うの~!

ツバサ
その上、宛名の沼田城ちゃんどころか、
殿たちも居ないし……!

ツバサ
このまま放ってはおけないから、届いたお手紙はみんな、
沼田城さんの御城に送らせてもらうよ! 許してね~!

名胡桃城
……とのことです。

沼田城
あぁ、なるほど……。

千狐
ツバサ……。

名胡桃城
状況を飲み込めていないのですが、
そもそも、お返事というのはいったい……?

千狐
えぇと……沼田城さんが各地の城娘に手紙を送ったんです。
素敵な点を紹介してもらう、という目的で……。

名胡桃城
その返事があの山ですか。
……いったいどれだけ送ったんです?

沼田城
それはもう……皆様の伝手を借りて、
思いつく限りは全て……。

名胡桃城
はぁ、あなたという人は……。

沼田城
だってあの時は必死でしたし!
この機会を逃したら、二度と外へは出れないと思って……!

名胡桃城
言い訳は結構ですから……それで、
どうするつもりなんです? あの手紙の山は?

沼田城
それはもちろん……、
一つ一つ読ませていただきますよ?

沼田城
色んな城娘ちゃんの、素敵な紹介文が集まったわけですから……。

千狐
ですが、御城が埋まりかねない程の量となると……。

やくも
一つずつ目を通していたら、
日が暮れる……どころか、年が暮れてしまいそうだに……。

沼田城
…………。

沼田城
な、名胡桃ちゃーん……。

名胡桃城
……なんですか?

沼田城
開票のお手伝い、
お願いできます……よね?

名胡桃城
……考えるまでもありませんね。

沼田城
名胡桃ちゃん……!

名胡桃城
当然、謹んでお断りします。

沼田城
名胡桃ちゃ~ん……。

名胡桃城
お断りに決まってます! 勝手に飛び出して、思いつきで催事を始めて!
その手伝いに私が付き合わされるというのは、どんな理屈ですか!

沼田城
ま、待ってくださいよ、名胡桃ちゃん……。
これからも身を尽くす、って言ってくれたじゃない……!

名胡桃城
それとこれとは別の話。自分でまいた種なんですから、
きっちり最後まで後始末をつけてください!

名胡桃城
手紙の開封から集計、お礼の返事まで、きっちりと!

沼田城
そんなぁ~!

この後、沼田城は厳しい監視の下で、
ひたすら開票に明け暮れる、地獄のような日々を送ることになるのだが……。
それはまた、別のお話――。



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